九月一日〜朝から晩まで~
第5章 逃避行-悩ましい夕暮れ
ぬるくなって来た砂を踏み、
だいぶ人の減った浜を歩く。
見渡せば家族連れが去り、
落日を待つ男女ばかりになっていた。
だがこの中に。
始業式をボイコットした教師と生徒は、
我々以外いないだろう。
「ほんとねーな、お宝」
「アオくん、見て!」
数歩遅れた場所にしゃがみこむ手には、
大きめの白い貝殻が掲げられている。
そこに戻り、横に腰を下ろした。
「…楽しかったな」
「そうだねー。
仕方ないなぁ。お宝あげちゃおっかな」
「毎度。
んで、あそこに売店あるだろ?」
紗良はお使いを頼まれたとでも思い、
素直に小銭と貝殻の物々交換に応じた。