九月一日〜朝から晩まで~
愛してると言いつつ。
なにも言わず、見せなかったあの人。
決定的に拒否されたことを受け入れられずにいた、
あの日の記憶だけがない。
目覚めた病院で。
「平気そうに見えた」と、
なぜか自分に謝り続ける大人たち。
説明しなくてはならない理由が、
さっぱり思い浮かばなかった。
あの気の迷いを体感していなければ。
今、紗良は存在しなかったかもしれない。
生きていて良かった。
そこにいたはずの女子高生は、
慈愛の笑みを浮かべ、
左手首の古傷に唇を寄せた。
「さっき強いって言って、ごめんね。
…痛い?」
「遥か昔のなんだ。
しかも、何も覚えてない」