九月一日〜朝から晩まで~
第2章 逃避行-噛み合わない午前
駅前でレンタカーを借り、
一先ず必要なものは着替えだ。
郊外によくある大型の洋服店に車を止め、
買い物は紗良に任せることにした。
冷え過ぎるクーラーに窓を開けると、
潮の香りが薄く漂う。
今頃、長い校長の説教を聞かされているであろう生徒たちには申し訳がないが。
すぐそばに迫る海の萌しには、
気持ちが浮き立っていた。
「ただいま!
寂しかった?アオイちゃん」
助手席に戻って来た紗良は、
預けた財布から取り出した矢澤蒼名義のクレジットカードを返しながら、
ニヤついている。
「言ってろ」