天才策士は一途な愛に跪く。
「不思議な縁を感じる・・。
彼女は、瑠維の好いた女性だから
こちら側に引き入れる事が最善かとは思ったのだが・・。」

「全く・・。我慢が利かずに、突っ走りおって・・。」

思いもよらない報告を聞いて耳を疑った。

準備を万全に事を動かしたかったのに・・。

「悪意や、嫉妬は人を盲目にさせ、こちらの意図に反して勝手に動くから厄介だ。」

苛立たしげに、一枚の写真を投げつけた。

瑠維、遥、怜、晶が笑顔で映った写真が床へとゆっくり落ちていく。

瑠維の嫉妬心を煽り、疑心暗鬼になってかきまぜようと思ったが・・。

そして、「あいつ」に、そんな求心力があるはずもないか。

「どうしましょうか、社長?」

「明日の帝都ホテルの招待状は、こちらに届いておりますが・・・。」

一通の白い封筒が冷たい銀色に輝く盆の上に載せられていた。

「山科聖人か・・。」

自分の偉大な父の悪事を世の中に晒して、
断罪を求めた恐ろしい息子。

父の野性的な外見とは異なる息子・・。

母親似の中性的で、色素の薄く美貌の好青年だった。

・・山科は、協力相手でもあり、脅威でもあった。

マスコミや、警察権力にも君臨していた絶対君主をあっさり失脚させた二条慧と山科聖人・・。

森丘 晶があちらの手の内にある事を知った時には、
流石に焦ったが・・・。

まだこちらにも切れるカードはある。

聖人の父親のように、過去を全て暴かれ断罪されるなんて真っ平御免だ!!


「そうだな・・。
大勢の招待客の中に紛れられる。
・・明日が最後の接触のチャンスだ。」

大都会のネオンの明かりは赤く光っていた。

薄暗い宵闇を怪しく照らしていた。


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