天才策士は一途な愛に跪く。

遥が高めのヒールをチラつかせて睨む。

どうして瑠維と遥は喧嘩っ早いんだろう・・。


「oh・・。チーフのスーツ姿は僕が一番に褒めたかったのに!!
先手必勝ですよね、やっぱり・・。」

「・・何が先手必勝なのよ!?意味わかんない!!」

瑠維のおふざけに、アオイまで乗ってる・・。

私は深くため息をついて、ジットリした目で2人を見上げた。

「あれ!??君は、イケメンだね・・。しかも、日本語上手だね??」

よく分からない失礼な絡みを見せる瑠維は、アオイにほほ笑んだ。

「あ、僕はチーフの・・森丘さんのチームで研究員やっています。
ドイツから来た、アオイ=フォン=マッケンゼンです。
宜しくお願いします!!」

「えー・・。ドイツ??しかも、ファーストネームの間にフォンが入るって・・。
爵位持ちの貴族系じゃん。
・・・しかもマッケンゼンて、、あれ?どっかで・・??」

驚いたようにアオイは瑠維を見た。

「よくご存じですね!!
そうなんですが、、うちは大したことないですよ。」

「えー??そうかな・・。
でも、あれ・・。確か、マッケンゼンて・・・。」

瑠維が考え込むように、腕を組んで思案していると後ろから瑠維の肩を
誰かが掴んだ。

「おい・・。瑠維、いいか?」

さっきまでのふざけた瑠維の表情がスッと翳りを帯びた。

見覚えのある顔に、私はすぐに姿勢を正して礼を取った。

「こんばんわ。本日はお忙しいなか、有難うございます。」

笑顔で挨拶をすると、瑠維によく似た南條ハイテクノロジーの社長が
こちらに笑顔と、会釈を返した。

「森丘さん、この度はおめでとうございます。」

「南條様、・・有難うございます。」

私の会釈に南條は、爽やかな笑みで相槌を打った。

「瑠維、ちょっといいか・・。
始まる前に打ち合わせしたいことがあってな。」

「・・・解った。すぐ行く。」

ブスッとした表情で、父も見ないで了承の意を告げた瑠維は、
私のほうをチラッと見た。

「晶・・。また後でな。」

「・・?うん、解った。またね!!」

「遥、お前もな。」

私と遥は、コックリと頷いた。

「今のが・・・南條か。」

ボソッとアオイが呟いた。

その言葉に驚いて、アオイを見上げると恐ろしいほど涼やかな視線で
南條を見つめるアオイが見て取れた。

「・・・アオイくん?」

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