天才策士は一途な愛に跪く。

「美桜、あのな・・。話すと長くなるけど、
ちゃんと後で説明するから・・。
無理はするなよ!!
俺の秘書は合気道と、空手の達人だから今夜は大人しく
側に居てくれ!!」

「・・・絶対、説明してよ。
気をつけてね、慧。・・お兄様もよ。」

雰囲気を察して、美桜はあっさりと引き下がった。

秘書が美桜の身体を気遣って椅子を差し出すと、お姫様扱いに困ったように笑った。


時計を確認すると開宴まで、あと37分・・。

「あっちだ、慧。」

「解った、こちらも動く・・。」

慧は携帯を手に取って発信ボタンを押した・・。

会場を抜け出した2人は、客室のほうへと向かった。

気持ちはせかすように、足取りが早くなる。

「晶・・。」

「大丈夫だ、、こっちは万全の準備で来ている。
俺たちが2人が組んで失敗したことは
ないだろ。」

横を並んで歩く、慧は鮮やかな笑みを浮かべた。

「ああ・・。
だけど、どんな綿密な計画も人間を相手にしているんだ。
「絶対」はないよ。」

だから、怖いんだ・・。

その言葉を聖人は、ぐっと飲み込んだ。

「そうだな・・。
「あちら」の出方はどうも計画性とは程遠い・・。
だからこそ、不穏な感じがあるんだよな。」

聖人の言葉の意味を理解している慧は、表情を変えずに納得していた。


客室廊下の絨毯の上を足早に歩む。

逸る気持ちを落ち着かせるように、聖人は大きく息を吐き出した。



コンコン・・。

客室をゆっくりノックした。

誰もいない客室の廊下はガランと静まり返っていた。

ガチャッ・・。

客室へと続く扉がゆっくりと開かれた。

そこからは見慣れた顔がひょいと姿を現した。

「晶、忙しいところ呼び出してごめん・・。」

神妙な表情をした瑠維が、私に入室を促した。

「どうしたの!??
・・あの、大変な事って一体何があったの??」

「ああ・・色々あってパニックだよ。
もう一度、晶とちゃんと話をしなきゃって思って・・。」

険しい表情の瑠維に、私は入り口横の続き部屋へと促す。

そこには、瑠維の父親と、もう2名の男性が大きな応接用のソファセットに座っていた。


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