天才策士は一途な愛に跪く。
「アルバン君の研究を高値でうちで買う代わりに、事故に見せかけて抹消する。
山科は恐るべき提案を私にしたのだよ。
君の周りで、最近良くないことが起こっていると聞く・・。
アルバン君が亡くなる前に、君に起こったことと同様のことが起きている・・。
心配でならないのだよ。」
瑠維が、落ち着いた声で父親を見上げて言った。
「それは、晶が階段から突き落とされたり、海で溺れかけたことや・・。
住んでいたマンションが火災にあったりしたことですか??」
私は、不安気な表情で南條の大きな瞳を見た。
「ああ・・。
階段から落ちたことや、水上バイクが転覆するなんて・・。
本当に危なかったな。
父親と同じように火事で亡くなるような事はあってはならないと思うんだ。
君もまた、再び山科の犠牲者になってしまうのを止めたい・・。
瑠維の友人でもある君に、何かあったら私も後悔してしまうだろう。」
「驚いたな・・。」
瑠維の瞳は鋭くなり、睨みつけるように父を見下ろした。
「どうして父さんが、それを知ってるんですか?
少なくとも・・。晶が階段から突き落とされたことは、晶しか知らないはずだ!!
マリンスポーツを進めたのもあんただったし・・。
俺は、一言もあんたに事故にあったなんて話してないんだよ。」
瑠維の言葉に、南條は青ざめた表情で横にいた2人を見上げた瞬間。。
だった・・。
「「ガチャ・・!!!」」
そこに、バンと客室の続き戸のドアが開け放たれた。
スーツ姿の捜査員と、慧と聖人が早足で部屋の中へと侵入した。
「なっ・・。お前たち、どうやって・・!!?」
南條は驚いて目を見開いた。
側を固める男性2人もすぐに抑えられて身動きが取れなくなり、困惑の表情を浮かべていた。
瑠維がさっきドアを開いた時にスライドロックを倒したままドアを閉めていた。
私はとそれに気づくと、瑠維を見上げた。
「・・よし、大方、時間通りかな。」
ピラッと一枚の紙きれを差し出した。
「これ、山科さんの作ったタイムスケジュール通りだろ。
開宴まで残り10分か・・。ギリギリ間に合ったな。」
私を見て、冷静な瑠維の表情に驚きを隠せない・・。
「だって、瑠維・・。お父さんの犯した罪を暴くなんて。」
「実の父だから許せないんだ!!
きっと山科さんも同じ気持ちだったはずだよ。」
「父さん・・。山科に金を払った理由は別にあるんだろ。
アルバン氏の研究を一緒に手伝っていた助手の男性を引き抜いたのはあんただ・・。」