天才策士は一途な愛に跪く。
瑠維は、出ていく父の様子に首を傾げた。
薄っすらと笑みを浮かべている様子に何故か違和感を覚えた。
「なんなんだ・・。」
眉根を寄せて、小さくなる父を見つめていた。
二条慧は、警察と共に部屋を出てエレベーターホールへと向かう。
部屋の中には、私と、瑠維、聖人が残った・・。
「南條くん・・。君が調べてくれた情報のお陰だよ。
でも、君には辛い思いをさせてしまったね・・・。」
聖人が、苦しそうな表情で瑠維を見つめた。
そして、横に並ぶ私のほうへと視線を向けた。
「君の過去は、明かされるたびに君は傷つく・・。
それを晒すことが良いことなのか解らない。
だけど、君を傷つけて、嫌われてでも・・。僕は君を守りたかった。」
私は、涙目で聖人を見上げた。
「悲しいわ・・。
あまりに父と、母が可愛そうで。
でも、これが事実なんだよね。
今は辛いけど・・。
いつかきっと、知らないままよりも知って良かったと思う日が来ると思う。」
私は力なく笑う。
母から真実を聞いた時も、ショックを受けた。
だけど、少しずつ受け止められるようになった。
その過去もひっくるめて私の一部だから・・。
瑠維は、静かに地面を見ていた。
痛みに耐えるような表情でつぶやいた。
「苦しいです・・。調べて事実が明るみになった時も・・。」
「でも、山科さんも・・。
貴方もきっと、こんな思いをしたことがあるんですよね・・・。」
瑠維が真っすぐに聖人に問いかけるような瞳で見つめた。
「・・・あるよ。だけど、僕は・・。まだ子供で、無力だった。」
「そこから、18年後・・・。
漸く、父の悪事を世に出すことが出来たんだ。
死を選ぼうと思う程、自分のルーツが憎かった。
父も、世界の全てに絶望した時もあったけど・・。
今は生きていて良かったって思える。この手で晶を・・、晶を守ることが出来た。」
「俺も・・。父にこれ以上の罪を犯させることはなくなった。」
瑠維も聖人の言葉に大きく頷いた。
優しい瞳で見つめる聖人と、瑠維。
「・・・ごめんね。
瑠維も、聖人君も・・。2人共、有難う!!」
「おう、これから大変だろうけど・・。山科さんもサポート
してくれるって。晶も、宜しくな。」
瑠維の言葉に、聖人は大きく頷いた。
「うん・・。もちろん。」
聖人と瑠維は、晶の顔を見下ろして優しく笑った。
「パーティが始まるよ。行こうか。」
私は、ゆっくりと目を閉じて、大きく息を吐いた。
まだ、第二幕は始まってない・・。
聖人は、時計を確認する・・。
そして、決意を秘めた表情で顔を上げた。