天才策士は一途な愛に跪く。
ゼミ合宿の夜・・・。

満天の星空の下で、君は別の人間を想っていると聞かされた。

瑠維の気持ちは知っていたが、彼女は「友人」としか思ってないのは
明白だった。

全ての告白を断っていたと知っていたから、安心していたんだ・・。

「「 君の隣は僕だろ・・??? 」」

やっと君の隣に並んだのに・・・。

横で鋭い視線を向けた僕は天上の星に見とれる、君の横顔を静かに見つめた。

そんな・・。
僕の内心穏やかではない気持ちを君は気づきもしない。

あの頃から、何かが可笑しくなり始めた・・・。

ギリッと唇をかみしめた。

「隣で研究してみて思い知らされた。君は優秀だった・・。
蛙の子は蛙だったんだと思い知らされたよ。」

狂気を孕んだ瞳は、ナイフを前に持ち帰ると私の喉元へと突き付けた。

「君の研究は・・認められ!!
世界的なレベルでの研究になっていく・・。
だけど、僕はただの大学院での講師職・・。
挙句に、因縁の会社である山科メディカルに入社した。
・・初恋の相手と再会して有頂天になっていた!!」

「おい、そんなのお前に関係ないだろ!?
研究が認められるのは、友達として嬉しいって
あんなに応援してたじゃないか!?」

瑠維は、眉を下げて怜を悲しそうに見つめていた。

「お前に焦りはなかったようだな・・・。お気楽だもんな、お前は。」

その言葉に、痛みを覚えたような瑠維は睨みつけるように怜を見た。

「そんな君を見ているのは心底耐えられなかったよ・・。
父は、君の父の才能に嫉妬していたはずなんだ。
僕も君を見てると、自分の才能のなさに挫折感しか感じないんだよ!!」

「君を見ると・・。君を知るたびに自分が嫌になる!!
醜い自分を知らしめるように、いつも綺麗で、純粋に周りを信じて疑わない・・。
そんな馬鹿正直な君がとてつもなく憎くなっていった!!」

「そんな・・。」

私は眉根を寄せて怜を見上げる。

彼の瞳は未だに激しい怒りの頂点に達したままでいた。

「地獄の苦しみだったよ・・。
山科メディカルに入り、研究が認められ・・。
初恋の相手と幸せになる君の未来をこの先も・・。
ずっと、見守るなんて・・耐えれないんだよ!!」

冷たい物が冷やりと喉元に当たった・・。

「止めろよ!!怜・・。止めろ!!」

瑠維の焦った声が聞こえる。

耳元で話を続ける怜の言葉を理解できない・・。

私が悪いの??
< 116 / 173 >

この作品をシェア

pagetop