天才策士は一途な愛に跪く。
何でこんなに怜は、目の前で苦しんでるの??

信じられない事実の連続に、心はすでに疲弊していた・・。

「お前、俺の・・父に協力していたのか?」

「南條さんから、父が死んだのは山科のせいだと・・。
晶の父の研究、は南條で買ったものなのに、
父は山科に裏切られて殺されたんだと聞かされた・・。」

「一緒に、山科に復讐しようって・・。
協力したら、南條が僕の研究の資金面も工面してくれるってさ・・。
父の弔いになるんだからって言われたよ。」

「・・・あいつ。やっぱり怜まで巻き込んだのか・・。」

だからか・・!!


さっきの不敵の笑みは、こうなることを想像していたのか・・。

瑠維は悔しい表情で舌打ちした。

「全部知ってたのにな。
あいつが罪を父さんに被せたことも知ってた!!
父は、それそら全部知っていたんだ・・。
死んでしまう前の父は、すでにアルバンへの罪の呵責で精神を病んでいたんだ。」

瑠維は黙って怜を見つめていた。

「南條さんだって、僕が利用させてもらっただけだ。
晶を僕が傷つけたかった!!
僕を、僕だけを見て欲しかったんだよ・・。ずっと・・。」

あの夜・・。

バーから出て、トイレへと向かおうとした時に聞こえた言葉・・。

「会いたい・・。」

電話の受話器の先にいる人物へ向けられたその甘い声を聴いた時・・・。

何かが壊れた。


階段を降りる君を、後ろから突き飛ばした。

スローモーションのように、落ちていく君を振り返らずに通り過ぎた。

山科聖人の傍に行ってしまう・・。

彼女が自分の手に届かない存在になることが耐えられなかった。

「「それならいっそ、死んでくれ」そう思ってしまった・・。

大事にしたいのに、ずっと、側にいたいのに。
自分の大事な人はいつも自分の傍から離れていってしまうから。

それならいっそ・・・!!!

「・・マンションに火をつけたのは、南條さんが単独でやらせたものなんですね・・。」

最悪なタイミングで現れた山科 聖人が、落ち着いた声で怜に問いかけた。

そこで、怜はナイフを持つ手の力を強める。

「そうだよ!!僕の行動は衝動的すぎるってさ・・。
そりゃそうだよなぁ・・。
そもそもあいつに協力する気なんてサラサラないんだからさ!!」

激高した怜が、感情を露わにするように聖人を強烈に睨みつける。

「あんたが現れなければ良かったんだよ・・。死んだはずのあんたが!!」

高揚した怜はいつ私を傷つけても可笑しくない状態だった。

ナイフがス・・ッと一筋私の首元を掠めた。
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