天才策士は一途な愛に跪く。
「怜・・・!!!」

「お前を一人にして悪かった。父さんのことも・・。
小さかったお前が全部抱えてたんだな。
苦しかったんだろ。ちゃんと気づいてあげれなくてごめん。

ごめんな、怜・・。」

離婚するまでは仲が良かった兄弟だった。

小さい頃はいつも一緒だった。

賢くて、本が大好きだった父似の怜・・。



父が亡くなって、一緒に暮らすことを申し出た時・・・。

怜は、その申し出を断った。

「僕は、この家を出たくないんだ・・。」

あの言葉の意味を初めて理解した。

それは、あの庭にある「白い薔薇」を守りたかったからだと・・。

今なら気づけたのに。

「ごめん・・。お前の気持ちを解ってあげれなくて・・。
怜本当に・・すまなかった!!」

絞り出すような兄の声と・・。


その兄の流す涙を見ながら、怜は表情を失くしたまま警官に連れていかれる。

何も言葉を発せず、彼の姿は見えなくなった。

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