天才策士は一途な愛に跪く。
誰もいなくなった駐車場の中は閑散としていた。
「あ、そうだ。慧、これ返しとくね。」
ドシャ・・。
駐車場のコンクリートの床に、相当な重みのある物が置かれた。
琥珀色の綺麗な瞳は細められていた。
「防刃ベストなんて、普通は持ってないと思うけど?
相変わらず、・・物騒な生活してるね。」
「いや、防弾チョッキと迷った。
日本では、刃傷沙汰犯罪のほうが多いからな。そいつのニーズがなくて良かったよ。」
2人の物騒な会話に私と瑠維は目をパチクリしていた。
「お陰様でね、いつも助かるよ。」
いつも・・。
どんな生活をなさっているんだろう・・!?
普段通りの会話のように弾む2人のやり取りに置いてかれてる感しかない・・。
「二条くんて、昔からミステリアスなとこあったけど・・。
知れば知る程謎が深まる・・。もはや袋小路だよ。」
私は唖然とした表情で慧を見上げた。
慧は、嬉しそうにクスリと笑う。
「そう?森丘さんのほうがミステリアスだよ。容姿も、君のルーツも・・。
知れば知る程、面白いけどね。」
「・・・そう??そうかな・・。」
自分の一体、何がミステリアスなのか・・。
いまいちよく分からないけど・・。
「この2人と同級生ってだけで、俺・・。男としての自信がなくなる・・。」
瑠維は会話を聞いて青ざめていた。
「アベレージを遥かに超えた人たちの会話だから、気にしなくていいよ・・。」
苦笑している私に瑠維は同意する。
「そうだな・・。そう、気にしないようにしよう。そうしよう!!」
私の言葉に、聖人は不思議そうに首をかしげていた。
アオイは、落ち着きを取り戻した駐車場の出口付近を思案しながら歩いていた。
「白い薔薇か・・。」
白薔薇は香澄さんが、好きな花だ・・。
アオイは懐かしい思い出を想い浮かべながら、ゆっくりと鉄の扉で出来たドアを閉めた。
パーティが終わって、ホテルの一室で開かれた二次会は事件などなかったかのように
穏やかな歓談が続いていた。