天才策士は一途な愛に跪く。
「色々、大変だったのね・・。全く、いつもそうだけど・・。
慧もお兄様も水臭いじゃない!!」

美桜は、頬をピンク色に染めて怒っていた。

「知ったら黙ってないだろ・・。君の性格をよく知ってるから伏せていたんだよ。」

「どういう意味よ!?いつもいつも・・。こう用意周到に計画立ててもう!!この策士!!」

怒っている美桜と、困っている慧はどちらも秀逸な芸術品のようだった。

二次会は少人数で行われていた。

気心の知れたメンバー数名でのホテルの小さなバーを借りた会だった。

目の保養になる、美男美女夫婦の2人の痴話げんかは隅で勃発していたが・・。

私は、遥と話をしていた。

瑠維を含めて、3人で怜の話をちゃんと遥としなければいけなかった・・。

「そう・・。そんな事があったの・・。怜が、取り乱した姿なんて私、見たことないから・・。」

遥は、涙を浮かべていた。

逮捕された話を聞いた時の遥の表情は、真っ青で理解出来ないという表情だった。

「まるで別人みたいだったよ。
でも、そこまで追い詰めたのは親父のせいだったかもしれないし・・。」

「そんなことないよ・・。
私がそもそも、気づかなきゃいけなかったと思う・・。」

「私のせいだよ!!ちゃんと怜の気持ちに私が気づいてたら・・。」

真剣な表情で発言すると、遥はため息をついた。

「晶!!私と瑠維でさえ気づかなかったのに・・。
鈍感で、お人好しの晶が気づくわけないじゃない!!」

「そうだよ・・。晶が気づいてるくらいなら、こっちはとっくに気づくっての!!」

「・・・いや、そうかも。でも・・。そうかな・・。」

聞き捨てならない2人のセリフに、私はポカンと口を開けたまま驚いていた。

水掛け論だった。

結果、私達は気づいてあげられなかった・・。

だけど、そこを悔いてもどうにもならないのも解っていた・・。

「だけど、待っててあげることは出来るからさ。
・・・あいつのこと、待ってるしかないだろ。」

「いつか、また怜と笑って話せる日がくるのかな・・・。」

遥がボソッと呟いた。

「解らない。だけど、いつかそんな日が来ればいいな。」

瑠維はそう言って笑った。

私はどうなんだろう・・。

怜の無気力な瞳を思い出すと、胸に痛みを覚えていた。


聖人は、少し離れた場所から晶の様子を見ていた。


彼女の疲れはきっと限界を超えた場所にあるのかもしれない・・。

彼女にとって、大変な日だった。
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