天才策士は一途な愛に跪く。
午前0時を過ぎる前に、会は幕を閉じた。
家のドタバタで、急遽会社に戻らなければいけなくなった瑠維と仕事で早めに退席した遥も、そこには残ってはいなかった。
「お疲れ様でした・・!!お気をつけて。」
私は会社の企画部の担当者に、丁寧に礼をする。
「森丘さん、またねー!!
今度はゆっくり家にも遊びに来て。」
美桜が、慧と肩を並べて笑う。
私はその姿を見ながら嬉しそうに目を細めた。
「また、新しいスケールの話もしたいし是非×2!!
今日は長時間に及んで絶対疲れてると思うから・・。
今夜はゆっくり休んでね。」
「ええ・・。有難う。
森丘さんもお兄様も、ご自分も労わってあげてね!!」
「解ってるよ、美桜。おやすみ。」
「またな、森丘。・・聖人もまたな!!」
車に乗り込んだ2人を、車が見えなくなるまで見送った・
ホテルのエントランスで最後のお客様の見送りを終えた私は、聖人のほうを振り返った。
さっきから彼が見せる、影のあるような表情に不安が募っていた。
「聖人君、どうしたの??」
不安気な私の声に、聖人は私の瞳を見ずに背を向けたままだった。
「いや、晶が無事で良かったなって思ってさ・・。」
そう言うと、ゆっくりと振り向いて私の顔を見下ろした。
琥珀色の瞳は静かに揺れていた。
「聖人くんのお陰だよ。
私、本当に守られてばっかりで・・。」
再会してから、何も知らぬままただ聖人に守られていた。
彼に甘えてばかりだった。
「今度は、貴方にも恩返しをしないとね・・!!」
意気込んだ私は、聖人を見上げて微笑んだ。
「恩返しか・・。君のお陰で、このプロジェクトも。
それに、うちの会社も評価される。
それで全部チャラだから気にしなくても良いよ。」
私は弾かれたように、強張った顔のまま聖人を見上げた。
表情は変わらず、穏やかに笑っていた。
「君を守れたんだ。
それに、無事に君の研究も、世の中に出回ることになるんだ。やっとだ・・。」
聖人は嬉しそうに微笑んでいた。
「これで安心して、君を手放せる。」
口角を上げて、琥珀色の瞳を細めた。
「嘘だよ・・。聖人くんなんで!??」
私は張り付いたような笑顔のまま、動きを止めた。
何を言ったの、今・・。
心臓が早鐘を打ち始める。
「ごめんなさい、ちゃんと聞き取れなくて・・。
今の言葉は、どういう意味なの・・??」
彼が何を言ったのか聞き取れなかった。
ううん、聞き間違えたんだと思った。
「君はもう・・、用済みだって言ったんだ。」
私と聖人の間に、夜風が吹いた。
隙間を冷たい風が通り過ぎたような気がした。
私は、目を大きく見開いた。
言葉を失って立ち尽くしていた。
家のドタバタで、急遽会社に戻らなければいけなくなった瑠維と仕事で早めに退席した遥も、そこには残ってはいなかった。
「お疲れ様でした・・!!お気をつけて。」
私は会社の企画部の担当者に、丁寧に礼をする。
「森丘さん、またねー!!
今度はゆっくり家にも遊びに来て。」
美桜が、慧と肩を並べて笑う。
私はその姿を見ながら嬉しそうに目を細めた。
「また、新しいスケールの話もしたいし是非×2!!
今日は長時間に及んで絶対疲れてると思うから・・。
今夜はゆっくり休んでね。」
「ええ・・。有難う。
森丘さんもお兄様も、ご自分も労わってあげてね!!」
「解ってるよ、美桜。おやすみ。」
「またな、森丘。・・聖人もまたな!!」
車に乗り込んだ2人を、車が見えなくなるまで見送った・
ホテルのエントランスで最後のお客様の見送りを終えた私は、聖人のほうを振り返った。
さっきから彼が見せる、影のあるような表情に不安が募っていた。
「聖人君、どうしたの??」
不安気な私の声に、聖人は私の瞳を見ずに背を向けたままだった。
「いや、晶が無事で良かったなって思ってさ・・。」
そう言うと、ゆっくりと振り向いて私の顔を見下ろした。
琥珀色の瞳は静かに揺れていた。
「聖人くんのお陰だよ。
私、本当に守られてばっかりで・・。」
再会してから、何も知らぬままただ聖人に守られていた。
彼に甘えてばかりだった。
「今度は、貴方にも恩返しをしないとね・・!!」
意気込んだ私は、聖人を見上げて微笑んだ。
「恩返しか・・。君のお陰で、このプロジェクトも。
それに、うちの会社も評価される。
それで全部チャラだから気にしなくても良いよ。」
私は弾かれたように、強張った顔のまま聖人を見上げた。
表情は変わらず、穏やかに笑っていた。
「君を守れたんだ。
それに、無事に君の研究も、世の中に出回ることになるんだ。やっとだ・・。」
聖人は嬉しそうに微笑んでいた。
「これで安心して、君を手放せる。」
口角を上げて、琥珀色の瞳を細めた。
「嘘だよ・・。聖人くんなんで!??」
私は張り付いたような笑顔のまま、動きを止めた。
何を言ったの、今・・。
心臓が早鐘を打ち始める。
「ごめんなさい、ちゃんと聞き取れなくて・・。
今の言葉は、どういう意味なの・・??」
彼が何を言ったのか聞き取れなかった。
ううん、聞き間違えたんだと思った。
「君はもう・・、用済みだって言ったんだ。」
私と聖人の間に、夜風が吹いた。
隙間を冷たい風が通り過ぎたような気がした。
私は、目を大きく見開いた。
言葉を失って立ち尽くしていた。