天才策士は一途な愛に跪く。
けたたましい機械音が聞こえていた。

   「「 ゴゴゴゴゴゴ・・・。」」


耳を澄まさなくても、バッチリ聞こえてくるその音に驚いた私は、すぐにバチッと目を開けた。

天井にはモダンで豪華なシャンデリアと、
等間隔に並んで埋め込まれた、美しい無数のライトが
私を照らしていた。

「・・・んなっ!?な・・。」

ふかふかのマットレスに身を沈めたまま左右へと視線を這わす。

ベットの横にはサイドボードが2つ。

そこには、クリスタル製のテーブルランプが煌めいていた。

「なっ・・。なんなのよ・・!!?ここ!!?」


   「「・・・ガバッ!!」」


起き上がると、視線の先には大きなスクリーンが埋め込まれていた。

そこにはマップと、文字が描かれていた。

「タイムトゥ・・ディスティネーション??」

フライトタイムが表示されたスクリーンを確認して、目を見開いた。

「起きた・・!?良かった・・。気絶しちゃうからさ、心配したよ。」

アオイが、ラフな格好で現れた。

手に持っていた冷たいミネラルウォーターを渡してくれた。

「冷たい・・。」

喉を通り過ぎる冷たい水の感覚に、現実感を取り戻す。

でも・・。

確かわたし・・。

最後に見えたのは聖人の小さくなる背中だった。

その痛みに、私は表情を曇らせる。

「いや・・。あのさ、えっ・・。ここって・・。まさか・・・。」

キョロキョロと周りを見回すと、無数の窓が開いていた。

気のせいか、薄っすら雲が見えるんだけど・・。

「そのまさかだよ。ジェット機の中にいるんだよ!!」

「嘘よっ!?ジェット機っていうか・・。
ここってまさか・・。」

「そうだよ、うちのプライベートジェットでドイツに向かってるんだ。」


「・・・ド、ドイツ!??また、遠いところに!!」

拉致か・・!!

私は、パニック気味に驚いていた。

「そうだよ・・。やっと君を連れて行ける。嬉しいんだ!!」

アオイは嬉しそうに、私を見下ろして頷いた。

「いや、あの・・。これ、まるで誘拐でしょ!?」

呆れたような表情で見上げた。

青い瞳は、サファイアのように嬉々として輝いている。

金色の髪に光が差して、プラチナの光を放っていた。

王子様みたいな容姿のアオイに、私は不安と驚きで青ざめていた。

「・・アキラ、君の本当の運命に会いに行こう。」

そう言って、彼は私の頭上にそっとキスをした。


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