天才策士は一途な愛に跪く。

「い・・。」

「・・先生。森丘先生?!!」

ハッ。

意識が飛んでいた。

最近の私は、時々こうやって過去の自分の、過去の風景へと心は飛んでいってしまう事が多い気がする。

まだ講演会の最中なのに!!

少し長めに息を吐いた。

私は、ノートパソコンの前でハッと呼び掛けてきた司会者の声に驚いて
少々慌てた顔でホール全体を見渡した。

まだザワザワと話し声はしていたのだが、大体の議論は終えた様子で談笑しているグループもあった。

書記の役割を務めているであろう人が必死に議論をまとめているようだった。
ほとんどのグループは発表の準備は出来てそうだった。

「みんなグループワークの発表内容をまとめ終えたようですよ。」

「そうですね・・。すみません、それでは何組かのグループに発表してもらいましょうか。
後は最後のほうに私がまとめて終わりますね。」


「わかりました。それでは、適当に前から当ててみますね。最後に質問のほうも受けて、それから
まとめる形でお願いしても宜しいですか?」

「ええ、勿論です。当ててもらう作業まで司会者さんにお任せしても良いんですか?
色々と流れのフォローもしていただいて、どうも有難うございます。」

私は、気の利く司会者に笑顔で丁寧に礼をした。

講演会は質問もたくさん出て、グループワークも好評だった。

講演内容の中では、スケールを使用したメンタルヘルスの指標は自分の回答結果を見て、

どれほどのストレス負荷が自分自身にかかっているのかが分かりやすく点数化される用紙を使用した。

美桜が作成したこのスケールは目視しやすく大変好評だった。

私は自分のことのように嬉しくて、美桜のほうを見た。

彼女も嬉しそうに周りの評に目を細めていた。

<良かった・・。>

私は胸をホッと撫でおろし、まとめと終了の挨拶を終えて深い礼をとった。

大きな拍手と共に、無事に講演会を終えた。







< 14 / 173 >

この作品をシェア

pagetop