天才策士は一途な愛に跪く。
「おい!!どういう事だよ、遥・・!!」

出版社のエントランスで男女2人が向き合っていた。

怒りを抑えきれない瑠維は、遥の会社へと単身乗り込んできていた。

あの記事は、遥の勤めている雑誌社で出している物だった。

それを知って、居たたまれなくなった瑠維は遥かに会いに来たのだった。

遥は、涙目で瑠維を見た。

「仕方ないじゃない・・!!仕事だもの。。」

「仕事なら友達も売るのかよ!?お前、最低だな・・!!」

瑠維は、遥を睨んで苦しそうに顔を顰めていた。

「だって、まさか・・こんな記事になるなんて知らなかったんだもの!!
アオイ=フォン=マッケンゼンと、晶のツーショット写真がいるって・・。
そう指示されただけだもの!!」

「どうにかならなかったのかよ・・!!
あいつは、晶はずっと傷ついてばかりじゃないか。」

電話をかけても電源が切られた様子で繋がらない・・。

不安で溜まらなかった。

遥は、瑠維をキッと睨んだ。

ずっと我慢していた気持ちが零れそうだった・・。

晶のために精一杯頑張る瑠維をずっと見て来た。

そんな光景を見るたびに、人知れず傷ついてきた。

怜まで晶を想っていたこともショックだったし、
瑠維は自分の父を断罪しても晶を守ろうとした・・。

怒りの矛先が自分にまで及んで、もう我慢の限界だと感じた。

「みんな・・晶。わたしも頑張り屋の晶が・・大好きだよ!!
だけど、みんな晶ばっかりじゃない・・。
瑠維だって・・。
あんただってそうよ!!
私の気持ちなんて全然気づいてもくれない・・。」

睨んだ瞳から気づくと涙が零れていた。

瑠維は、遥の涙に驚いて瞳を大きく瞬かせた。

「私は・・。大学院時代からあんただけが好きだった!!
ずっと、瑠維が好きで・・。瑠維だけに見て欲しかったんだよ!!」

「・・遥。」

思いがけぬ告白に、驚いた瑠維に涙をながしたまま
遥が胸に飛び込んでくる。

瑠維はその身体を、呆然とした表情のまま受け止めた。

「解ってるよ!!瑠維は晶が好きだって!私じゃ駄目なのも・・。」

遥の痛みが瑠維にも理解できる。

聖人に感じていた想いと、同じような想いだった・・。

「ごめん・・。ごめんな、遥。」

そう言って、遥からそっと離れると泣きじゃくる遥と向き合った。

「遥・・。教えてくれるか。リークしたのは誰だ?
こんな詳しい情報は、身内か内部からじゃないと解らないだろう??」

その言葉に遥の瞳は揺れた。

「・・・山科 聖人だよ。」

「え・・っ??」

「彼が、この情報をうちにリークしたの・・。」

その言葉に、瑠維は目を見開いた。

「嘘・・嘘だろ?」

都会の喧騒の中で、瑠維の言葉は夜の闇へと吸い込まれて消えた。

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