天才策士は一途な愛に跪く。
懇親会の会場は二条の子会社であるビルディングの近くに建てられた、
西洋建築の豪華なホテルで開催された。

ロココ調の内装で、大きな円柱や立派なバルコニーの仕付けられた立派な会場に
私は一歩足を踏み入れた時に驚愕した。

「すごい・・。こんな大規模な懇親会だなんて・・。」

ざっと500人以上は収容出来る広さのホールにバカラのシャンデリアが連なっていた。

煌びやかな光を人々の真上に照らしていた。

司会役の企画部のEAP担当者の男性が笑顔で私にシャンパンの入ったグラスを差し出した。

「急遽、二条CEOより連絡が入って、本社ではなく会場変更と懇親会の会場の手配も
秘書のほうに依頼されているのでそちらに変更したいと言われまして。
下見に来た際には、私も驚きましたよ。」

「そうでしょうね。
滅多に会社規模でこんな場所を懇親会場に使うなんて発想になりませんよね。
まるで著名人の行う結婚式の舞台ですもの・・。」

自分の着ているグレーのスーツが霞むような華やかさにゴクリと喉を鳴らした。

立食形式のパーティで、御影石で出来た重工な丸テーブルが所々に設けられていた。

社員も驚きながらも、温かい料理や飲み物に表情を緩ませて楽しそうに歓談していた。

「先ほどの講演、素晴らしかったです!!また是非宜しくお願いします!!」

「あの、早速なんですがカウンセリングの予約を入れたいんですが・・。当分はカウンセリングの予約って
埋まっちゃっていますかね?」

「有難うございます。えっと、予約システムを確認しないとなんとも言えませんが。
週に3度は本社にお邪魔させていただいてますし、そんなに先の予約にはならないと思いますよ。」

笑顔で、丁寧に一つ一つの質問に答えていた。

お礼や、講演の感想を頂きながら私は両頬が引きつりそうになっていた。

「先生は、モデルみたいに背が高いですよね!!
スタイルもいいし、外国人みたいにハッキリしたお顔をされてますよね。
会場に入って来たときは・・。
貴方が今回の演者と聞いて驚きましたよ。」

急に割り込んで入ってきた若い男性が距離を詰めてくる。

さっきまで話していた中年男性は不快そうに顔を顰めていた。

「あ・・有難うございます。
そうですね、容姿のことは全く講演には関係ないように思えますが・・。」


昔からのコンプレックスである日本人離れの容姿を指摘された私は、
受け答えにしどろもどろになってしまう。
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