天才策士は一途な愛に跪く。
「美桜。きみは今・・、幸せなのか??」
「勿論よ。だって慧だよ?
私は、私のままで・・いつも笑顔でいられるのよ。」
「そうか・・。慧だってそうだろ。ずっと、あいつにはお前しかいないもんな・・。」
天才外科医で、キレ者の親友・・。
「慧を振り回せる人間は、世界でただ一人だけ・・。」
「美桜だけだからな。」
「同じでしょ?山科聖人を振り回せるのも、、森丘晶だけよ。」
美桜は真剣な瞳で、聖人を見つめる。
「山科を背負わなくてもいいのよ?お兄様・・。
お兄様が幸せになるなら、足枷になってしまうのなら・・。
山科なんて捨ててしまえばいいわ・・!!全部、私と慧が何とかするんだから。」
相変わらず過激な発言をする妹に、白い歯を見せて笑う。
「あははははっ・・。美桜は、変わらないな。安心するよ。」
彼女が彼女らしくいるのは、慧のお陰なんだと噛み締めて笑う。
妹の言葉に、胸につっかえていた苦しみが少し和らいだ気がした。
自分を想ってのこのお節介な行動には正直少し戸惑っていた。
だけど、黙っていられない想いがあったんだと改めて気づく。
「ありがとう・・。美桜、こんな形で気を使わせてすまないな。」
「謝らないでよ、お兄様!!勝手に、一人で不幸になろうとしないで!!
もう二度と・・。そんなの・・。私も慧も許さないんだから。」
パカポカ叩く美桜の頭を優しく撫でた。
涙ぐんだ美桜は、ぎゅうっと唇を噛み締めて大きな瞳を瞬かせていた。
泣きつかれた美桜は、聖人にしがみついたまま眠ってしまった。
リビングスペースの方で、
瑠維と話を終えた慧が、眠っている美桜を見つけてクスッと笑った。
「・・・聖人、すまないな。美桜はベッドまで連れてくから。」
「うん。身重な美桜にまで心配かけさせて悪かった・・。
連れてってやって。」
そっと美桜をお姫様抱っこしてあげる慧が、泣きつかれて眠る美桜を表情を
見下ろして愛おしそうに笑った。
その瞬間に、聖人は切ない想いが過った。
「世界で一人か・・。」
「ん?何の話だ・・?」
思い出し笑いを浮かべながら、美桜のセリフを慧に伝えると慧は嬉しそうに目を細めた。
「美桜らしいな・・。聖人、お前もちゃんと幸せになれ。
お前はあの日、幸せになるために生き返ったんだからな。」
自分には、待っててくれた友と家族がいた。
その目覚めは、清々しい目覚めだった。
だけど、「彼」は孤独なのだ・・。
「僕は、彼女と彼女の父のために何が出来るのかな・・。」
翳りを帯びた聖人に、慧は優しく微笑んだ。
「出来る事はあるさ・・。
この飛行機は、アルバン氏が用意してくれた物だ。お前を連れてこいってさ・・。」
その言葉に、驚いた聖人は驚きに目を見開いた。