天才策士は一途な愛に跪く。
大きなキングサイズのベッドは、寝るスペースには困らないが明らかに邪魔だった。

「うわ・・・。これ、懐かしい・・。」

箱を開けて中身を見ると懐かしい物が沢山詰まっていた。

小学校や、中学の文集やアルバムがあった。

「やだ・・。聖人くんこんなに、幼かったんだ!!可愛い。」

小学校のアルバムまで遡ると、懐かしいを通り越して可愛らしくもあった。

「・・あれ??」

私は、違和感を覚えてアルバムを捲っていく。

「そっか・・。私と同じ、アルバムの編集委員会だった。
あれ、これ・・。クラブも同じ??」

小学校のアルバム編集員会のメンバーの中に、私と聖人が両端に立って笑っていた。

クラブも同じ、バスケットボール・・。
男女は別だったけど、同じ場所で活動していたはずだった。

中学の文集では、図書委員会を務めていた彼の隣に私が微笑んでいた。

「こんなに、私達一緒にいたんだ。知らなかった!!」

ダンボールの下には、何本もの傘が入っていた。

演奏会の時に、毎年置いてあった色とりどりの傘がびっしりと詰まっている。

私は、クスッと笑うと懐かしくなって一本一本を手に取る。

フリルのついたものや、ボタンを押すと大きく開く傘、可愛い動物の描かれた傘が
あった。

毎年違う色で、凝った傘が届くたびに傘を開いて見上げては笑顔になった・・。

「雨の日でも傘を選ぶ楽しみがあるって言ってたっけ・・。」

昔、そう言ってくれた聖人の言葉を思い出していた。

目を輝かせて喜んでいた。

1つ、奥の方に見覚えのない傘が転がっていた。

それを手に取って開くと

「「バサッ・・・。」」

大きな音と共に、傘の内側が大きく開いた・・・。

そこには、晴れ渡る快晴の空の絵が描かれていた。

見覚えのある、その傘に驚きのあまり震えさえ覚える。

「これは、この傘は・・!?」

持ち手の部分に、名前が描かれていた。

ローマ字で刻まれた文字に、私は大きく目を見開いた。

「「Y MIO 」」

そう刻まされた文字に、息を飲んだ。

「美桜ちゃんの・・。じゃあ、あの子は・・。」

「「いくよ・・。」」

あの日の光景が蘇る。

傘が大きく大きく広がる。
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