天才策士は一途な愛に跪く。
聖人は、笑顔になった。

琥珀色の瞳はゆっくりといつもの優しい笑みを浮かべていた。

「はい・・。だけど、とても苦しいです。
ぼくは、初めて出会った時からずっと好きでした。
いまは、彼女をとても愛してます・・。」

雨の日に見かけた、不思議な瞳の女の子・・。

ケーキ屋の軒下で何時間も、雨に打たれていた。

声をかけた彼女を一目見た時、その大きな青い瞳に釘付けになった。

傘を開いた瞬間・・。

あの日の、あの青い瞳を細めて嬉しそうに見上げた晶の顔が蘇る。

自分のことのように、嬉しかった・・。

彼女の笑顔は、大輪の薔薇が咲いたように美しかったんだ。


アルバンの青い瞳は、嬉しそうに優しく細められた。

「そうか・・。
会ってみたかったんだ。
晶が愛した君と・・。きみは、思ってた以上の人間だった。
どうか、晶とマックスブラント家を頼む。」

「・・・はい。それを貴方が望むなら。応えたいと思います。」

優しい眼差しは大好きな彼女とよく似ていた。

自分を必要としてくれるアルバンの青い瞳を静かに見つめる。

「望むとも・・。君なら、出来るよ。
私もサポートするから・・。」

「有難うございます。
その為には、貴方も一日も長く生きて彼女の側にいてくださいね。」

聖人は、膝を折ってアルバンの顔を見上げた。

「わかった・・。治療も頑張るよ。君たちの幸せを見届けなければな・・。」

「いい医者を紹介しますよ・・。彼なら、きっと治してくれます。」

手を握り合った2人は、微笑んだ。

涙に濡れた琥珀色の瞳は、美しく輝いていた。

部屋には、アールグレイの紅茶と三段に分けられたスコーンや、サンドイッチ
が大きなワゴンで運び込まれてくる。

「聖人くん、アフタヌーンティを一緒にどうだい?」

「いいですね・・。頂きます。」


嬉しそうに笑うアルバンにつられて、聖人は幸せそうに笑っていた。
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