天才策士は一途な愛に跪く。

「なんで!?あの・・ちょっと、山科くんてば!?」

日本語にならない言葉を並べた私に、プッと噴出した聖人は私の耳にそっと耳打ちした。

「こうしておけば変な虫は寄って来なくなるでしょ。
君が困惑している行為は、単なる虫よけのためだから・・。
きみは黙ってエスコートされてね。」

楽しそうに片目でウィンクされた私は、何故か更に真っ赤になっていた。

「・・あの、はい・・。すみません。」

さっきまで羽虫のようにウロついていた男性は
慌てたように一瞬で姿を消した。

好意でやってくれているんだと無理やり納得させることにするしかなくて
緊張のせいで手汗はすごいし、動悸はするのにそのままの姿勢で会場の外へと運ばれる。

恥ずかしくて涙目になった私の表情を見て聖人は何故か嬉しそうに笑った。


熱気の籠るパーティ会場を出た私と聖人はロビーの椅子に腰を下ろした。

「気づくのが遅れてごめん、大丈夫だった?」

何故か私の隣の椅子に腰かけた聖人は心配そうに私の横顔をのぞき込んでくる。

心臓に悪いからやめて欲しい!!!

「大丈夫です・・。それよりも二条くんと、美桜さんは?」

「ああ・・。あの二人なら帰ったんじゃないかな。」

クスクス笑いながら楽しそうに答える聖人に口をポカンとした私は首を傾げた。

「えーと・・。ああ、助けるために会場から連れ出してくれたの?」

「いや、違う。」

「森丘さんと、僕が2人きりで話したかったから。」

「ええっ!??」

心臓に悪い返答をさらりと繰り出してきた聖人に私は唖然とした。

ずっと忘れられなかった初恋相手に「君と話したかったから」
なんて言われるなんてラッキー。

・・・なんて思えない!!

心の準備なんて全然出来てない。

二度と会えないと思っていた初恋の相手との想像もしてなかった急な再会に

何をどう話せばいいの・・!?

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