天才策士は一途な愛に跪く。
「俺は聖人だけは敵に回したくないな。
それに、こんなことで協力したってバレたら・・。
美桜がまた家出でもしそうで怖い。」

「あははは・・。変わらない恐妻関係だね。」

その言葉に、聖人も顔を綻ばせて笑う。

「そうしたら、弁解は僕がするよ。
君の言葉通り、人心掌握は僕の仕事だからね。
それよりも・・。
南條ハイテクノロジーの息子が晶のすぐ側にいた。」

慧の瞳が一瞬鋭くなった。

「南條が?何だそれ・・。そんな情報あったか?」

「いや、大学院の頃からの友人らしい。
慧も社の人間関係は把握しやすいだろうけど、私生活はプロにでも調べてもらわない
限り把握出来ないからね。でも、多分あの息子は大丈夫だろうと思う。
一応、気をつけて見ておくよ。」

「ふーん・・。そうだな。
怪しい動きがあったら言ってくれ。
目には目をだろ?何がどう化けるか分からないからな。」

「ああ。絶対に、彼女だけは・・僕が。気を抜かずに側にいるよ。色々とすまないな。」

眉を下げて笑う聖人に慧は不安を覚えたような目線で
聖人を見る。

「乗りかかった船だ。協力する。
森丘も、それに・・。お前も放っとけないからな・・。」

慧は観念したように聖人を見ると、嬉しそうに聖人も頷く。

「心強いな。ありがとう。」

「ああ、だから・・。1人で無理はするなよ?」

ピクリと頬の表情がひきつる。

聖人は少しだけ長いため息を吐き出した

「・・わかった。もう君に心配はかけないよ。」

相槌を打った聖人は慧に手を差し出した。

「共犯関係、再スタートだな。」

慧と聖人は口角を上げて、パンと手を合わせた。




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