天才策士は一途な愛に跪く。
「今日の演者がまだここにいるなんてどうしたの?
何かトラブルでも?」
呆然と立ちすくむ私に、優しい表情で二条慧が話しかけてくる。
極力、彼の隣の人物に視線を向けぬように火照る顔をぐっと持ち上げる。
「、、っ。今日は予約が立て込んでギリギリまでセッションが入ってましてっ!!」
緊張で顔が強張るし!!
なんか声も裏返った。
仕立ての良いスーツを着こなし、芸能人のような美麗な容姿に加え、
颯爽とした風格を漂わせる彼には同級生と分かっても受け答えにはしどろもどろになってしまう。
「あ、、あの。急いで出ようとエントランスに来たらこの雨で!!
しかも、私ったら今日に限って傘を忘れて・・。
だから、あの!!受付にタクシーをお願いしようと思ってて。」
時間に焦りを感じつつも社長を無下には出来ないので精一杯頭を整理しようと息を吐いた。
二条慧はエントランスの外をちらりと見ると深く頷いた。
「ふーん。そっか・・。
なら僕らの車に乗ってけばいいよ。」
「・・・は?」
なんですと!?
意味がわかんないんだけど・・!!
雨だからって、社長の車に便乗する平社員てどうなのかしら。
私たちのやりとりを周りの人は息を殺して聞いていた。
驚きが波紋のように周囲に広がっていく
いたずらな表情を浮かべた同級生は横にいる男性をちらりと眺めた。
「いいよな?聖人。」
「ほら、同郷のよしみでさ。俺たちも彼女の社員対象の講演会に視察に向かうつもりだったし?」
二条慧は、何故か挑むような瞳で隣を眺めた。
「そうだね。いいよ慧。」
面をくらったような表情の聖人の様子に私はどうしていいかわからずに混乱した。
「にっ。。社長!?
いや、私はタクシーで行きますし!行けますから!?」
明らかに動揺した私は大きな瞳を二条慧の横に並ぶ男性へと視線を反らした。
「大丈夫ですから!!お気持ちだけでっ。」
彼の琥珀のような色素の薄い綺麗な瞳と視線が搗ち合うとドキンと高鳴るような激しい鼓動を感じた。
懐かし笑みに私の身体は震えていた。
「僕は別に構わないけど?」
「いや、、あの本当に大丈夫ですから。」
私の困った顔に山科聖人は何故か嬉しそうに微笑んだ。
ボソッと何かを呟いて私の顔を覗きこむようにして瞳を細めた。
「・・・山科くん。」
懐かしい笑顔が私の眼前に再現される。
15年前の最後の彼の表情が頭をよぎって私は不安そうに彼を見上げた。
「森丘さん、今日の講演会では美桜の開発したスケール使ってくれるんだよね。
前から、楽しみにしてたんだ。」
今にも消えてしまいそうな儚い笑みを向けられると、どうしていいのかわからなくなる。
「ええ。山科くんたちのご期待に添えられるように頑張ります。」
張り付けたような笑みで返した。
「ほら、時間がないぞ。
車は表に回してるから行くぞ。演者が遅刻はありえない。
行くぞ森丘さん。・・聖人も早く。」
「っ!はいっ。すみません!!」
鋭い声と、秘書に差し出された傘と開かれたドアの扉に私は震える指をかけた。
何かトラブルでも?」
呆然と立ちすくむ私に、優しい表情で二条慧が話しかけてくる。
極力、彼の隣の人物に視線を向けぬように火照る顔をぐっと持ち上げる。
「、、っ。今日は予約が立て込んでギリギリまでセッションが入ってましてっ!!」
緊張で顔が強張るし!!
なんか声も裏返った。
仕立ての良いスーツを着こなし、芸能人のような美麗な容姿に加え、
颯爽とした風格を漂わせる彼には同級生と分かっても受け答えにはしどろもどろになってしまう。
「あ、、あの。急いで出ようとエントランスに来たらこの雨で!!
しかも、私ったら今日に限って傘を忘れて・・。
だから、あの!!受付にタクシーをお願いしようと思ってて。」
時間に焦りを感じつつも社長を無下には出来ないので精一杯頭を整理しようと息を吐いた。
二条慧はエントランスの外をちらりと見ると深く頷いた。
「ふーん。そっか・・。
なら僕らの車に乗ってけばいいよ。」
「・・・は?」
なんですと!?
意味がわかんないんだけど・・!!
雨だからって、社長の車に便乗する平社員てどうなのかしら。
私たちのやりとりを周りの人は息を殺して聞いていた。
驚きが波紋のように周囲に広がっていく
いたずらな表情を浮かべた同級生は横にいる男性をちらりと眺めた。
「いいよな?聖人。」
「ほら、同郷のよしみでさ。俺たちも彼女の社員対象の講演会に視察に向かうつもりだったし?」
二条慧は、何故か挑むような瞳で隣を眺めた。
「そうだね。いいよ慧。」
面をくらったような表情の聖人の様子に私はどうしていいかわからずに混乱した。
「にっ。。社長!?
いや、私はタクシーで行きますし!行けますから!?」
明らかに動揺した私は大きな瞳を二条慧の横に並ぶ男性へと視線を反らした。
「大丈夫ですから!!お気持ちだけでっ。」
彼の琥珀のような色素の薄い綺麗な瞳と視線が搗ち合うとドキンと高鳴るような激しい鼓動を感じた。
懐かし笑みに私の身体は震えていた。
「僕は別に構わないけど?」
「いや、、あの本当に大丈夫ですから。」
私の困った顔に山科聖人は何故か嬉しそうに微笑んだ。
ボソッと何かを呟いて私の顔を覗きこむようにして瞳を細めた。
「・・・山科くん。」
懐かしい笑顔が私の眼前に再現される。
15年前の最後の彼の表情が頭をよぎって私は不安そうに彼を見上げた。
「森丘さん、今日の講演会では美桜の開発したスケール使ってくれるんだよね。
前から、楽しみにしてたんだ。」
今にも消えてしまいそうな儚い笑みを向けられると、どうしていいのかわからなくなる。
「ええ。山科くんたちのご期待に添えられるように頑張ります。」
張り付けたような笑みで返した。
「ほら、時間がないぞ。
車は表に回してるから行くぞ。演者が遅刻はありえない。
行くぞ森丘さん。・・聖人も早く。」
「っ!はいっ。すみません!!」
鋭い声と、秘書に差し出された傘と開かれたドアの扉に私は震える指をかけた。