天才策士は一途な愛に跪く。
南條瑠維は浜辺で真っ暗に広がる海を見ていた。

薄い雲の隙間から指す、銀色の月の光が自分の半身を照らしていた。

二条慧はモデルのような美形だった。

身長が高く、パーツのバランスが良く切れ長で誰もが見ほれる顔
を持っていた。

山科聖人は王子様のような容姿だった。
自分に近い中性の容姿と、色素の薄い茶色の髪に色白の肌・・。

瞳は琥珀色でアーモンドのような大きな瞳と長い睫毛。

自分は童顔で、一見ジャ〇〇〇系の容姿でモテなかったことはなかった。
南條ハイテクノロジーは企業規模も国内で3本に入る大手企業。

その御曹司で母に似た美しい容姿を持って生まれてきた。

欲しいものは何でも手に入った。

だけど、忙しく働く両親が不在の家で育った俺は何処かで冷めた感情と
埋まらない寂しさを持っていた。

自分に自信がなかったかと言えばあったと思う。

だけど、会社のパーティで二条慧に初めて会った時も・・。
晶の隣にいた山科聖人に会った時も自分よりも遥かに優れた人物だと直感で感じた。

・・自分では、叶わないと。

権威主義者の父を何処か冷めた目で見て、美貌を保つために必死な母をあざ笑い
気づくと子供のまま大人になっていた。

そんな薄っぺらい自分。

彼らは自分とは別次元の存在で、違うところにいるのだと直感で感じた。


M1・・。

大学院の博士前期課程から俺は東都大学に来た。

大学院は合計5年の課程がある。

Mは修士課程の2年間。
Dは博士課程の3年間・・。

5年間一緒だった彼女とは、ゼミが一緒だった。

同じ研究室で学び、席は怜を挟んで隣だった。

「ねえ、風が強いんだけど・・。ペーパー飛ばされちゃうし、窓閉めてもいいかな?」

初めて彼女と会った日。

オリエンテーションで研究室に集合した俺は、先に来て机の一番端に座って本を読んでいた
晶と出会った。

長い赤毛に、青茶の瞳・・・。
不思議に瞳の色と髪の毛は染めたもので、カラコンでも入れているのかと思った。


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