天才策士は一途な愛に跪く。
「わー、気持ちいい!!」



サクサクと足を進めると冷たい砂がサンダルの先の指に当たって心地ち良かった。

「すごーい・・。何これ!!めちゃくちゃ綺麗・・・。」

満天の星空を見上げた私は、耳に届く心地の良い波音と光輝く星空のコントラストに
晶はうっとりとした表情浮かべた。

カーディガンを羽織った姿でビーチの砂浜を星を見上げながら歩く。

「駄目だー!全然っ眠れない!!」

数分前に一旦寝ることをギブアップした私は、窓から見える月に誘われるようにビーチへと降りてきた。

年に一度、みんなで旅行することが定例になってもう5年。

社会人になって違う場所で忙しく働く私たちがゆっくりと話が出来る貴重な時間。

寝ようとベッドに入ったのに瞳を瞑っても全然眠れなかった・・。

旅行に来ちゃうと余計時間がもったいなく感じちゃうんだよね。

「すごいなぁ・・。
真っ暗なのに波の音も神秘的に感じる。夜の海って不思議・・・。」

綺麗なのに、少しだけ怖い。

ブルりと体温が冷えて身体を捩った。

「・・・何だよ、晶。ビビッてんの?」


寒くなって冷えた砂浜で立っている瑠維はいつもと少し雰囲気が違って見えた。

クスクス笑う瑠維が少し先の波うち際に立っていた。
月に照らされた瑠維は可愛いらしさよりも美しさが勝っていた。

「月とか星とか・・。
海とかさ、こうやってゆっくり見る事ないから。
贅沢な時間だなって。」

「ふーん・・。
確かに、今の時間は仕事してるか、接待会食してるもんな・・・。
頭上の星を見上げたこともなかったな、、。」

心地よく冷たい風が頬に当たる。

長い髪が遊ばれるように広がっていた。

沈黙が広がる。
いつもお喋りな瑠維が黙って海を見つめていた。

いつもは可愛らしい顔の瑠維の顔が心なしか大人びて見えてドキッとした。
月明りがそう見せてるのかな・・。

何だか瑠維が瑠維じゃない。

視線を感じて瑠維のほうを見ると、痛みを堪えるように私を見つめていた。

「・・晶はさ、ずっと髪伸ばしてるけど。それって何かの願掛け?」

私よりも数センチ背の高い瑠維は、私の背中まで伸びた長い髪の毛を見つめながら
ボソッと呟いた。

「そうかも。でも、一種のおまじないみたいなもんだよ?」

「ふーん。」

月に照らされた瑠維は影のある表情で私を冷たく見つめていた。

「それってさ、あいつ・・、山科聖人のためとか?」

私は瞳を見開いた。

快活で元気いっぱいな

いつもの瑠維じゃないみたい・・。


「どうしたの・・、瑠維?」

< 45 / 173 >

この作品をシェア

pagetop