天才策士は一途な愛に跪く。

少し不穏な空気感に、私は少しだけ焦りを感じた。

やっぱり瑠維の様子がさっきから可笑しいんだけど・・。

「なんだ・・・。」

「えっ・・？？」

私は不安そうに瑠維を見上げた。

「・・やっぱ駄目なんだ。俺・・。どうしようもないんだよ。」

「駄目って、・・何かあったの？？」

視線が合うと、瑠維が持つ女の子のように大きな綺麗な丸い瞳が揺れていた。

私が瞳に映り込む距離で瑠維は私を見つめ返してくる。

「何か嫌なんだよ！！ずっと嫌な気持ちになって・・。
晶が、あいつといるのを見た時から・・。」

驚いたように、目を大きく開けて瑠維を見る。



揺れる瞳は切なそうに私を見下ろされて何故だか私はどうしていいかわからなくなった。

どういう意味・・？

何で急にそんなこと言うの？？

その言葉を聞いたら・・・。
何かが壊れてしまいそうで私は言葉を飲み込んだ。

「・・・どうして。」

「俺、お前のこと・・・。好きなんだって。さっき気づいた。」

「・・・瑠維？」

震える声で親友の名前を絞り出した。

驚きが隠せない私は、たどたどしい表情で視線を宙に彷徨わせていた。

「多分、ずっと前から・・好きだった。
俺、晶の前に初恋の奴が現れなければいいって・・。
何処かでそんな汚い事を思ってた。」

「何で・・。何で今、そんな事・・・・。」

私は、見たこともないような瑠維の真剣な眼差しにいいようものない不安で一杯だった。

２人だけしかいないビーチは静寂が流れている。

ザザン・・。

ザン・・・・。

後ろから聞こえる規則的な波音も、胸の中で早鐘を打ち出した
自分の心臓の音も耳障りだった。

「嫌だからだよ！！止まんない・・。我慢なんか出来ない・・。無理だ！！」

瑠維が声を荒げて一歩踏み出した足にビクリと身体が震えた。

「お前を山科聖人に取られたくない！！多分、最初から・・。初めてみた時から、俺っ・・。」

私は、眉根を寄せたまま瑠維を睨んだ。

気が付くと瞼から熱いものが溢れそうになっていた。

「何でよ・・。止めてよ！！何でそんなこと言うの・・。」