天才策士は一途な愛に跪く。
外の景色はスモークが掛かっていて余計に灰色模様。

激しい雨がカーウインドウに打ち付ける様を私は静かに見つめていた。

乗車の際には丁寧にお礼を伝えたものの、何を話したらいいのか・・。

そもそも・・・。

わたしはなんでここにいるのかしら?

さっさと受付に声をかけてタクシーで現地に向かうはずだったのに。

何故わたしは元中学時代のクラスメイト2人と同じ車幅の長っがーい車に乗って

美人秘書は私を不思議そうにさっきから上から下まで見られながらまるで珍獣のように好奇な目線にされされている。


時々相槌を求められると笑顔で応じはするものの・・。

この緊張感ったらないわ!

どんなクライアントとのカウンセリングだってこんなに緊張しないわよっ!!!

むしろ大勢の前で講演するよりも、同級生である二条 慧と、山科 聖人とこの空間に収まっていることが
謎だよ。

まさかハルくんと、学校の王子として名高い山科くんと同じ車に乗って会話しているなんて

あの頃は想像すら出来なかった。

快適な車内の中では、秘書は口を慎みながら目の前の2人の談笑に笑顔で相槌を打っていた。

「プレス発表を急いだほうがいいんじゃないか?二条コーポレーションと山科メディカルの共同研究を
他社に盗られでもしたら気分が悪い。そう思わないか聖人?」

そう問われた質問に、長い睫毛を揺らして頬に手をかけてシートにもたれた姿勢の聖人は不思議そうに
顔を上げた。

「・・おい、聞いてなかっただろう。」

少し困った顔で笑うに慧に優しく微笑んだ聖人は嬉しそうにほほ笑んだ。

「聞いてるよ。いいと思うけど・・。再度コンプライアンスの部分だけ確認してからかな。
まだ穴はありそうだよ。焦らないほうがいいよ慧。」
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