天才策士は一途な愛に跪く。

「おい・・っ!!ちょっと待て、大丈夫だって事は解った。」


「・・何よ?どうしたの瑠維??」


「いや、どうなのかなぁ・・・。」

「あのさ、さっきのバナナボートもどうかと思ったよ!?
でも、怪我してホヤホヤな人間が水上バイク乗るってどうなん!?」


「そこそこ痛みはあるけど、平気だよ!!こんなチャンス滅多にないもの。
タダで水上バイク乗れるなんて最高じゃない。」

「お前な、、、呆れるほど元気だな・・。女にしとくの惜しいくらい逞しいわ。
何かあったらインストラクターと俺とでフォローするから。
だから、ちゃんと言う事聞けよー。」

瑠維は苦笑いしながら私の横のバイクに跨った。

海上は比較的、凪いでいた。

大きなボートはキッチンやトイレが装備された豪華な物だった。

南條グループの息子である瑠維の言う、「ちょっとしたマリンスポーツ」が桁違い
な事に驚きながらも今日は思いっきりやり尽くそうと夢だった水上バイクの上に
跨っていた。

ただし、私は免許を持ってないからインストラクターが乗せてくれる!!

しっかり掴まって海風を感じて乗っていればいいだけだから余裕だよ。

「うん、解った!!
本当は遥と怜のやってる水上スキーもやってみたいんだけど・・。」

「あれは駄目だろ。腕と足で思い切り踏ん張らなきゃいけないし。
腕の痛みが悪化するって・・・。
これだって、スピード出したら危ないんだぞ?
俺は免許持ってるからいいけど。
お前はちゃんと最後までコーチにしがみついてろよ?」

コーチの後ろにちょこんと座った私は、笑顔で瑠維に手を上げて返事をした。

「はーい!!解ってるってば。」

「はぁ・・・、晶って返事だけは一人前だよな。」

横眼で楽しそうに笑う瑠維の笑顔に少しだけ安心する。

ジェットスキーをキャンセルして、ボートに残ってくれた瑠維は
きっと怪我をした私に気を使ってくれたんだ・・。

いつもの瑠維と、こうして笑って過ごせる事が嬉しかった。

ドッドッドッ・・・。

大きなエンジン音が耳に届く。

私はエンジンがかかるとわくわくして瑠維の方を見た。

「よし、最初はスピードをあまり出さずに行くぞ。
井上さん、後から俺が着いていくんでお先にどうぞ!」

「はい!!では、お先に出ます!」

私の前で了解の指合図をしたインストラクターは、アクセルレバーを回した。

私も大きく頷くと同時に物凄いスピードで海の上を走り出した。


< 57 / 173 >

この作品をシェア

pagetop