天才策士は一途な愛に跪く。
「そうだね。私も好きだよ。
こうやって過ぎていく一日一日が
過去になって想い出になってくんだね。
貴重なんだよね・・。
だからこそ、運動会は休もうかなって思っちゃうんだ。」
楽しみであればある行事の日ほど、雨天になる確率が高かった。
私がいなければ、快晴の青空の下でみんなが心待ちにしてきた運動会が出来る
んじゃないかな・・。
そんなことを考えていた。
「森丘さんは、・・不思議なことを言うんだね。」
クスっと笑う聖人は、首をかしげて私を見た。
「神様でもないんだよ?
君の力だけで天候を変える力があるなんて、傲慢でしょ?」
「それに、クラスみんなでの行事に君がいなかったらみんな悲しむよ。」
「そうかな・・。」
聖人は、何でも知っているような顔をしている。
いつも私の言いたいことをちゃんと理解してくれるような・・。
そんな気がしていた。
「少なくとも、僕は悲しいけどな。
お昼ご飯の時に隣の席の人がいないのは寂しいよ。
それに、僕は晴れ男って言われてるから・・。
僕が君に勝てばいいだけだ。」
私はその言葉に瞳を輝かせて微笑んだ。
「山科くんのほうが強そう・・。何となく!!
だから祈っとくね。
山科くんの晴れパワーが私に勝つように。」
窓の外を見ると、黒い雲がかかってポッポッと雨が降り始めていた。
私は悲しそうに眉を下げた。
「あ・・。雨、降ってきちゃったね。」
日誌を書き終えた私は、席を立って窓辺へとゆっくりと移動をした。
聖人も窓の傍で外の景色をのぞき込んだ。
ザァァァァ・・・。
降り出した雨に、驚いた様子の生徒たちが慌てて学校の中へと駆けこんで行く。
「僕、雨の日はけっこう好きだよ。」
「そうなの・・??濡れちゃうし、嫌じゃない??」
私は驚いたように、少し先の距離で窓の外を眺めながら話を続ける聖人
に視線を向けた。
「朝、出がけに傘をどれにするか選ぶのも楽しいよ?
いつも、森丘さんの持ってくる傘ってどれも綺麗だから・・。
どんな傘を選んで来たのかって・・。結構、楽しみなんだけどな。」
目を細めて笑う聖人に胸の鼓動が早くなった・・。
優しい言葉に胸の中がぽかぽかと温かくなる。
温かい言葉をいつもかけてくれる彼に、私は何度救われたんだろう。
「森丘さん、あのさ・・。」