天才策士は一途な愛に跪く。
もう1つの運命との出会い。
旅行の最中で怪我をした私は一晩入院をした。
みんなと合流できたのは旅行の最終日の午後になった。
心配していた遥は散々泣くし、怜は落ち込んでたし
いつも元気で単細胞が取り得の瑠維も、謝り通しでなんだかペースが乱れた。
散々な旅行になっちゃった。
「みんなに・・。沢山心配かけちゃったな。」
ボソッと呟いた私の頭がポンポンと優しく撫でられた。
ハッと顔を上げると、聖人が優しく笑いかけていた。
「君のせいじゃないでしょ。お友達みんなも理解してるはずだよ?」
「・・そうだけど。なんだか・・申し訳なくて。」
羽田空港からは、聖人のリムジンがかいがいしくお出迎えをしてくれた。
二条慧の車並みに長い車体に目をパチクリさせた。
「あのー・・。これ、何処に向かってるんですか??」
私を送りたいからと、みんなと羽田で別れることになって家まで車で送ってもらっている
筈・・だったんだけど・・・。
どう見ても、郊外の私のマンションに向かっているとは思えない!!
都心のビルが立ち並ぶ銀座の通りを走っていた。
嫌な予感がした私は、思い切って質問したのだが・・。
「僕の家だよ?どうしてそんな事聞くのかな。」
「・・いや、だって。送るって・・。」
私は不安気に笑顔の聖人に疑問をぶつけた。
秘書の男性はPCを起動して何やら作業をしていた。
「一人にしないって言ったでしょ。」
「・・うん。でも、ええっ!?どう、どうするんですか??」
ちょっと待って・・!!
家じゃなくて、何処に向かうんですか!?
の回答に、僕の家って・・!?
えええぇっ!??
今、何と!!?
私は驚きを隠せずに口をポカンと開けて聖人を見た。
「聡い君はもう、気づいていると思うけど・・。君を一人にしたら危険なんだ。」
落ち着いた声色で聖人の口から鋭い言葉が投げかけられた。
やっぱり・・。
私が誰かに狙われていたんだ。
「私のライフジャケットが膨らまなかったのは・・、
故意の細工がされていたからなんだよね。」
その言葉に、聖人の表情はサッと曇った。
少し悲し気な表情の彼の表情は言葉よりも雄弁だった。
「階段から落ちた時も・・。本当は背中を押されたの。
確かに2つの両腕で誰かに強い力で押された感触が残ってる。
あの青い不審なボートも・・。
みんな、私が標的だったと考えたら納得できるから。」
私は緊張気味に整理しながら、言葉を紡いだ。
「そうか・・。
そこまで話してくれるならちゃんと言うね。
君の家に帰すことは出来なくなった・・。」
不思議そうに瞳を揺らした私の手をそっと聖人の手が触れた。
「昨夜、君のマンションで火災があったんだ。」
「嘘っ!!?・・まさか、そんなことが・・・。」
その言葉に私は驚いて目を見開いた。