天才策士は一途な愛に跪く。
一足先に降り立った聖人が、私の手を取って優しくその手を繋いだ。
「・・・すごい。何か、お城レベルの装飾だね・・。」
4階までの吹き抜けのエントランス部分には、大きなシャンデリアが上から吊るされていた。
眩いガラスの光に思わず目を細めた。
大理石の床がピカピカに磨き上げられていた。
何故かエントランスの入り口に大きなテーブルと、巨大な花の飾られた花瓶が
美しくディスプレイされていた。
「そう??気に入ってくれたら嬉しいけど・・。」
聖人はクスっと笑って圧倒されている私を見下ろした。
「使用人たちもここで暮らしているから、
何かあったらすぐに人が駆けつけるから安心して。」
「あ、そうだ・・。僕の父と母は隣の棟で暮らしているよ?」
山科くんのお母様は、再婚されたんだった・・。
でも、山科くんのお父様って・・。
私は不安気に聖人を見上げた。
すぐに何かを察した彼は、私の頭を優しく撫でてほほ笑んだ。
「父は・・。僕の本当の父なんだ。」
「えっ??」
私はあまりの驚きで声が裏返る。
「山科の父は・・・。僕の父ではないんだ。僕と美桜は異父兄弟なんだよ。」
「・・・そうだったんだ。」
色々な事があって、苦しんで・・。
でも、今の状況を受け入れている彼を心からすごいと思った。
ガタガタになった山科の家を一人でここまで再生させて、頑張ってきた。
義理の父である父親を二条慧と共に、司法に裁かせた。
山科の巨大帝国の崩壊を・・。
私は新聞やニュースで知った。
その後、再会した美桜ちゃんから山科くんが生きて活躍していることを聞いた。
翌年、大々的に聖人が山科グループのCEOとして姿を現した。
そして、彼が二条くんと崩壊した山科を過去よりも3倍以上の利益を生む
国際的な大企業へと成長させたことを知った。
「親は時に・・嘘をつくものなんだ。」
私は、驚いて聖人の顔を見上げた。
「その嘘は、時には子供を守る為に、そして時には自分を偽る為に・・。」
ゴクリと喉を鳴らした私は、不安気に聖人に問いかけた。
「・・山科くん・・・????」