天才策士は一途な愛に跪く。
「瑠維帰ったのか・・。丁度良かった、お前に話があるんだが。」

「何だよ・・。今日は疲れてるんだけど・・。明日にしてくれないかな・。」

ダルそうに、首を横にボキボキ鳴らしてため息交じりに父を見た。

「仕事の話と・・。まぁ、なんだ。
これはお前の友人の話が関係している話なんだが・・。」

もったいぶったような父の表情に、瑠維は苛立ちを隠せなかった。

「・・友人??誰のことですか??」

その言葉に驚いた瑠維は、父の向かい側のソファにドカッと腰を下ろした。

使用人に運ばれてきた、ティーカップに口をつけようとカップを持った瞬間だった。


聞きなれた名前に、瑠維は目を大きく見開いて父を見上げた。

「・・・もう一回言ってよ!晶が、、何だって??」

ガシャンと、持っていたティーカップをソーサーに荒く戻した瑠維は
睨むように父を見つめた。



「森丘 晶です。どうぞ宜しくお願いします!!」

翌日、聖人と共に山科メディカルに初出勤した私は
白衣姿のまま新規プロジェクトに参加する大勢を前に、深々と頭を下げた。

長い髪を後ろで編み込んで、緊張気味に頭を上げる。

青山に新たに建設された40階建ての巨大ビル
「山科メディカルアソシエイト」の中にあるラボ棟の19階に私はいた。

「森丘さんには新規事業である脳科学分野でのf-MRIを使った研究プロジェクトに
着手してもらうことになった。
そこの責任者として着任してもらうことになった。
それと、その新規チームのメンバーを紹介する。」

眼鏡をかけた、研究チームの統括責任者が紹介を始めた。
合計6人のメンバーが各自、自己紹介を始めた。

ガチャ・・。

フロアへと続くドアが開く。

「・・社長!!お、おはようございます!!」

統括部門の責任者が慌てて挨拶をした。

スマートな細身の青いスーツに上品なエンジ色のネクタイに身を包んだ
モデル顔負けのスタイルの良さと美しい美貌の聖人が秘書と話ながら笑顔で現れた。

私は驚いて目を丸くした。

朝に地下の駐車場であの長ーい車から降りた私は、それぞれの
階へと別れていた。

彼の後ろには秘書の男性と、もう2人・・・。

「おはよう、みんな。
・・森丘さん、今日からリーダーとして宜しくお願いします。
もう2人、急遽プロジェクトチームのメンバーに入ることになった方々を
連れてきました。僕から紹介させてもらいます・・。」
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