天才策士は一途な愛に跪く。
私は、思わずアオイを睨みつけるように見上げた。

そこは、「やっぱり、小柄な女性が好きだよ。」で、返すべきでしょ!!

私は目で訴えると、私にニヤリと嘲るように笑い返した。

「モデル体型とか、小柄とか、ネイルとかさ・・。
研究室に入るってことは目的は研究でしょ。
明日から機器が搬入されて研究が本格的に始まるのに。
ここで男漁りなんてしてる暇、ないと思うんだけどなぁ・・。」

ああああぁっ!!!

ストップ・・・!!

それ以上言うと、やばいやつ・・。

ちょっとやめなさいよ!!

心の中の声が、何故か彼にも届いているようで・・。

別に、本音しか言ってないけど?

みたいなあっけらかんとした表情で私を見る。

「そんな・・。アオイくん、酷い!!
漁るなんて、、そんなんじゃないのに!!」

ギリッと怒気をはらんだ顔で睨みつけると、
アオイは流石に両手を軽くあげて困ったように笑った。

潤んだ瞳で見上げた彼女をため息交じりに、アオイはそっと撫でてあげた。
その瞬間、嬉しそうに彼を見上げた彼女が次の瞬間に凍り付いた。

「あ、ごめん。
見たまんまを言っただけだけど。悪かったかな・・。」

青い綺麗な瞳は挑戦的に、小柄な明日奈を見下ろしていた。

「・・アオイくんて、最低!!」

泣きながら、一目散に走り去った彼女に声をかけようとしたが
間に合わなかった。

「ホントだよ・・。今のは、最低だってば・・。」

私は、ため息交じりにアオイを見上げると、彼はビールを一気に飲み干した。

「嘘つかなきゃいけないの??
晶がディスられているのとか、全然見たくないんだけど。」

「でも、同じ職場であんなに怒らせたら、
アオイくんが働きづらくなる・・!?」

アオイは話半分で、私の腕を掴むと不機嫌そうに引っ張る。

痛っ・・。

私は数日前の怪我が治らない腕をビクリと震わした。

「え”っ・・。ちょっと、待ってよ!!」

人込みを縫うように通り過ぎて、ドアの外へと連れ出した。

店の、トイレに続く細い廊下の前で止まったアオイは振り向きざまに私の顔の横にダン!!と両手で縫い留めた。

「ひゃっ・・!?」

これが噂の壁ドン!!?

さっきから流行りの用語のオンパレードにドキドキしていた。

「あのさ、アキラ!僕の名前聞き覚えない!??」

「・・・はい?」

想定外の質問に私は目をパチクリさせた。

晶って呼び捨てかい!!
< 81 / 173 >

この作品をシェア

pagetop