天才策士は一途な愛に跪く。

「アオイだよ・・。僕のこと、全く覚えてないの??」

私は目の前の頭二つ分大きな金髪の澄んだサファイアみたいな瞳を持つ
アオイの顔をまじまじと見つめた。

サファイアの瞳と目が合うと、ドキッと心臓の音が高まった。

絵本の王子様のような容姿・・。

高い鼻梁と、サラっと流れる金糸のような髪に思わず見ほれる。

それに・・。
何処か懐かしい感じがした。

「アオイ・・??」

「そうだよ!!覚えてない??」

ズイっと迫るアオイからは、柑橘系の甘い香りがした。

「いや、、こんな美形に会ってたらうっかり忘れないと思うけど・・。」

「ふーん・・。本当に見覚えないんだね。悲しいな。」

懐かしむような瞳で私の顔をジッと見つめてくる。

ギクリと身体が強張る。

「覚えてないけど。・・人違いじゃないの??」


傷ついたようなアオイの表情と、
その言葉を発した瞬間に胸が酷く痛んだ。

この人・・・。

「え?私のことを知っているの・・??」

その言葉にピクッとアオイの眉が動いた。

「君は本当に・・。忘れちゃったようだね・・。」

悲しそうな表情を浮かべたアオイは、私の瞳を見つめる。


「アオイ・・。何やってるの?」


その聞き覚えのある声に振り返ると、山科聖人が立っていた。

少し不愉快さを表情に出している彼に私は驚いた。

「山科君・・。」

「おいで、晶。」

動揺を隠せない私は、聖人に手を掴まれて引き寄せられた。

「・・・アオイ、強引なことはしないでくれって言っただろ。」

ため息交じりにアオイは、ゆっくりと聖人とすれ違う。

「解ってる・・。だけど、確かめたかったんだ。「彼女」なのかってね・・。」

その言葉を吐き捨てて、アオイは懇親会場の方向へ消えた。

「ごめんね・・。」

「仕事が片付かなくて遅くなった。大丈夫??」

聖人は、穏やかな笑みで私を見つめた。

「アオイに何かされたの?」

「いや、、何も。。」

恐る恐る聖人の顔を見ると、目が笑ってなかった。

「今夜は、これから大学院時代の友達と飲むんだよね?
さっき、携帯に連絡があったから・・。
もう、出るの?」


「戻っても気まづいし・・。
もうここを出ようかと思ってる。」

「そう・・。あんまり、無防備にならないでね。」

頷きながら、聖人を見上げる。

「晶は、無意識に魅了するから・・。放っておけない。」

うーん。
それは、私のセリフだ。
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