天才策士は一途な愛に跪く。
私は並んだ宝石の中で、1つの美しい蒼い石を選んで手に取った。
持ち上げて見ると、濃いグリーンにも、
濃い青や、ライトブルーにも見える不思議な石。
カッティングによって色のコントラストが変わる美しい石だった。
青い地中海の海の色に似ている、見飽きることのない光によって変わる美の
結晶だった。
「・・この石・・。とても綺麗。」
「ロンドンブルートパーズ・・。」
「確かに、君の瞳の色にも似てる美しい青い石だね。11月、晶の誕生石だ。」
驚いたように、目を見開いた聖人は少し嬉しそうにその石を見つめた。
トパーズは黄色いイメージだったけど、こんなに綺麗な色のものもあるんだ・・。
私は、4センチ程の大きな1粒のブルートパーズのネックレスを手にとって見惚れる。
「誕生石はお守り石にもなるって言うし、そのトパーズを身に着けたらいいよ。」
「・・でも、こんな大きな綺麗な石・・。」
「披露パーティの会場はあの帝都ホテルだよ?
あそこの華やかさに、負けない石だと思う。
変更点の指摘された部分も修正が終わった君の研究がもうすぐ通る・・。
僕からのお祝いのプレゼントだよ。」
実感が湧かないけど・・。
アクセプトされて、自分の論文が海外紙のジャーナルに載る未来なんて
想像出来なかった。
「うん・・。
人からこうやってお祝いしてもらうのってあまりなかったから。
素直に嬉しいよ。
ま、聖人君、どうも有難う・・。」
少しだけ勇気を出して、名前呼びをすると恥ずかしくて真っ赤になった。
どうも照れくさくて・・。
慣れないことはするもんじゃないわ・・!!
聖人が、私の後ろに回り、首にそっとトパーズを飾る。
「白くて、長い首によく映えるね。綺麗だよ。」
「・・あ、・・んんっ・・。」
私は、聖人にお礼を言おうと、視線を上げた瞬間に唇を塞がれた。
銀色の月の光が窓から薄く聖人の瞳を照らした。
金色の目が切なく輝いて見えた。
甘い口づけに、私は後ろずさるようにピアノに凭れた。
何度も角度を変えて口づけられると、熱い吐息が零れる。
離そうとすると、腰を抱きかかえられて身動きが取れなくされた。
潤んだ瞳で見上げると、同じように潤んで色気のある琥珀色の美しい瞳と
視線がかち合った。
宝石ケースの入った紙袋から、一枚の紙を私の手の上に乗せた。
「・・止まらなくなっちゃう。君の怪我も治ってないのに・・。」
薄く笑った聖人は、耳元で囁いた。
その瞬間に、ギクリと身体が硬直して動けなくなる。