天才策士は一途な愛に跪く。

「続きは・・全部終わったらかな。名残惜しいよ、君の甘い唇が・・。」

「・・なんっつー歯の浮く台詞を!!
表現がど、ストレートすぎるから!!私の心臓が持たないよっ。」

私のしどろもどろになった様子を見てクスッと笑った。

逃げるようにリビングにあるソファセットに腰かけると、
聖人が宝石が入っていた紙袋から何かを取り出した。

「晶もこれ、目を通しておいて・・。明日19時からパーティは開宴だ。」

その一枚の紙に視線を落とした瞬間に聖人の顔を見上げた。

事前に企画部から受け取った会の流れとは、
明らかに異なるものが書かれてあった・・。

「あの、こ、これは・・??」

「見たままだよ・・。
明日の夜は最後のチャンスなんだ・・。
僕らにとっても、あちらにとっても・・ね。」

カールした長い睫毛はバサッと揺れた。

不敵な笑みを浮かべた聖人に、私は言いようのない不安が過った。

私は、祈るように胸元のブルートパーズを握りしめた。


ネオン街の中心でひと際大きなビルが聳え立つ。

巨大ビルの最上階に位置する社長室には、不穏な影が動いていた。

「山科メディカルに入社してから、彼女の姿が確認出来ないんです・・。」

その報告に憤った様子で社長室のイスに座ったまま、南條が調査書をテーブルに投げた。

「瑠維は思ったような働きをしないし・・。
あいつは・・。他の使い道として動かすしかないか・・。」

「社内のセキュリティですが・・。
森丘 晶のフロアは、研究チームのメンバーのカードと指紋認証システムでロックが
かけられていて、フロアに立ち入る事も出来ない・・。
しかも、出入りはどうしているのか・・。入り口で張っていても出てこないんです。」

「電車や徒歩での通勤の様子はありません。
車や、ヘリなど乗り物の使用で出入りしているようですが・・。
研究棟の出入りは固くチェックされていて、エレベーターもID等を使用して専用階にしか
止まらない強固なシステムで守られているようでして・・。」

「「ガシャン・・・。」」

報告に苛立ちを隠せない様子で、持っていたウィスキーグラスを叩きつけるように
テーブルへ置く。

もう時間がない・・。

あの研究が日の目を見れば、こちらが不利益に会うことは目に見えている。
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