妖狐に染めし者
**

帰り際、光が、

「今日、紫さんと帰らね!お近づきになれたらいい

からな。てか美人だし!」

と唐突に言ってきた。俺も正直話してみたいと思っ

た。あの時は、話したというよりも口パクだったか

ら、あまり声を聞けなかった。だけど、迷惑じゃな

いかな。

俺はそう思い、ちらっと紫さんの方を見る。

紫さんは、弓月(ユヅキ)と話していた。すると、そこ

へ光が歩み寄って、

「なぁなぁ、紫さん。俺たちと帰らね?」

とやはり唐突に言う。ところが横で弓月が、

「光くん、姫ちゃんは、私達と帰る約束してるんだ

よ。ね、姫ちゃん、りお」

と言う。関間(セキマ)も口を開け、話し出す。

「そうだ。蒼(アオ)はともかく、姫花はあたしと帰る

予定だ」

俺は面倒臭いのは苦手だ。紫さんに会釈して一人で

も帰ろうと思った。

そして横を見た。すると、いつのまにか紫さんは俺

の近くにいた。そして後ろを振り向き、

「皆さんで帰りませんか?そちらの方がとても楽し

いですよ」

と、俺を弱らせる、あの微笑みで言う。

「可愛い…」

誰もがそう思った。(俺も含む)

「姫花がそう言うなら、しょうがない」

「はい、はーい!賛成!」

「姫ちゃんが言うんだもん。しょうがない!」

さすが。あの微笑みには誰も勝てるわけない。俺も

含むが。

そしてそれぞれの予定をなくし、というか、合体さ

せた。
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