時を繋ぐ真実の物語<「私の獣」番外編>
ケプラーが、目を見開く。やがて彼の口の端から漏れたのは、呆れたような笑い声だった。


「ははっ、随分なことをおっしゃいますね。どうしてまたそんなことを?」


「その予言は、間違っているからです」


「間違っている?」


「はい。この国に金色の髪を持つ王太子が生まれる時、この国は亡びる。そう書いているが故に、金色の髪を持つ現国王陛下は幼い頃から辛い想いをして生きて来られました。けれども、ご存知の通り国王陛下は、この国を滅亡に導くどころかかつてないほどの大国に発展させました。だからです」





アメリの真剣な眼差しに、やがてケプラーは薄笑いをやめた。そして、予言の書に書かれている特殊文字を、一文字ずつ指で追いながら読み解いていく。若いとはいえ占星術師の子孫であるこの男にも、やはり特殊文字は読めるようだ。


「失礼ですが、あなた方は勘違いをされているようだ」


「勘違いですって?」


「この予言の書が指し示している”金色の髪を持つ王太子”は、現国王陛下のことではありません。ここには、『金色の王太子”再び”生まれし時……』とあります。国王陛下は、この国で初めての金色の髪を持つ王太子だったのでは? だとしたらこの予言の書が示す王太子は彼ではなく、この先生まれる金色の髪を持つ王太子のことになります」


ドクン、とアメリの胸が音を鳴らした。夢の中で見た、金髪の少年の深いブルーの眼差しが、脳裏をかすめる。


アメリは、瞳を伏せた。膝の上の掌を、ぎゅっと握り締める。


「ならば尚更、その予言の書を書き直してください。この先生まれるその王太子が、彼らしく生きれるように」
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