時を繋ぐ真実の物語<「私の獣」番外編>
「なるほどね」
クス、とケプラーはいっそう小馬鹿にしたような笑いを浮かべる。
「たしかに、国王陛下はあなたと出会い随分と人柄が変わられたと聞いた。あなたへの”愛”が国王陛下を、この国を救ったのだと、ミーハーな女どもがキャアキャア騒いでいるのを聞いたことがありますよ」
そこでケプラーは、瞳からすっと笑みを消した。
冷徹な視線が、射るようにアメリを見つめる。
「予言の書は絶対ではない。時に、歯車が狂うこともある。けれども、私は”愛”の力など信じません」
伸ばされたケプラーの指が、向かいに座るアメリの顎先に触れた。
唐突に間合いを詰められ、アメリは硬直する。
「あなたが大切にされているのは、あなたが美しいからだ。その美しさ失くしては、国王陛下の心を射止めることなど出来なかったでしょう。あなたにしろ、そうだ。国王陛下がこの国の君主ではなくとも、愛することができましたか? 見かけに捕らわれる愛など、偽物だ。愛なんて、所詮そんなものです。愛が運命を変えることなど、あるわけがない」
アメリの全てを否定するような、きつい口調だった。
アメリが委縮している間に、ケプラーはもとの距離に居直る。
「予言の書を改ざんするつもりは全くありません。今すぐに、お帰りください」
「ですが……」
「帰れと言っているのです」
アメリの反論もむなしく、ケプラーは立ち上がると、冷たい視線だけを残して颯爽と部屋から出て行った。
クス、とケプラーはいっそう小馬鹿にしたような笑いを浮かべる。
「たしかに、国王陛下はあなたと出会い随分と人柄が変わられたと聞いた。あなたへの”愛”が国王陛下を、この国を救ったのだと、ミーハーな女どもがキャアキャア騒いでいるのを聞いたことがありますよ」
そこでケプラーは、瞳からすっと笑みを消した。
冷徹な視線が、射るようにアメリを見つめる。
「予言の書は絶対ではない。時に、歯車が狂うこともある。けれども、私は”愛”の力など信じません」
伸ばされたケプラーの指が、向かいに座るアメリの顎先に触れた。
唐突に間合いを詰められ、アメリは硬直する。
「あなたが大切にされているのは、あなたが美しいからだ。その美しさ失くしては、国王陛下の心を射止めることなど出来なかったでしょう。あなたにしろ、そうだ。国王陛下がこの国の君主ではなくとも、愛することができましたか? 見かけに捕らわれる愛など、偽物だ。愛なんて、所詮そんなものです。愛が運命を変えることなど、あるわけがない」
アメリの全てを否定するような、きつい口調だった。
アメリが委縮している間に、ケプラーはもとの距離に居直る。
「予言の書を改ざんするつもりは全くありません。今すぐに、お帰りください」
「ですが……」
「帰れと言っているのです」
アメリの反論もむなしく、ケプラーは立ち上がると、冷たい視線だけを残して颯爽と部屋から出て行った。