時を繋ぐ真実の物語<「私の獣」番外編>
夕方。アメリは重い足取りで、城内を歩いていた。
ケプラーを説き伏せることは、思った以上に難しそうだ。だが、アメリはあきらめきれない。
予言の書は普段は厳重に保管されており、滅多なことでは人目に晒されることなどない。
例え改ざんをしたところで、この城の重鎮たちは、『金色の国の王太子がこの国を亡ぼす』という予言の書の内容だけをまことしやかに次の世代に言い伝えるだろう。
だがもしも、何かの機会に誰かが予言の書を開き、あの予言の言い伝えが間違えていることをその目で見る機会が訪れるなら――あの少年は暗闇から救われるかもしれない。
アメリは、その一縷の望みに何としても懸けてみたいのだ。
そんなことを思いながら虹色に輝くギャラリーを歩んでいると、「アメリ様!」と向かいから若い男に呼び止められた。
騎士の、ブランだ。
「どこに、おられたのですか? 国王陛下が、アメリ様の姿が見当たらないと苛立っておいででしたよ。俺なんか、とばっちりくらって、しょうもないことで怒られたんですから」
唇を尖らせながら、ブランはぶうぶうと不平を訴える。
「嫌な想いをさせてごめんなさい、ブラン。カイル様は、今どこにいらっしゃるの?」
「おそらく、回廊にいらっしゃるのではないでしょうか。先ほど、階段を登るお姿を見ましたので」
ケプラーを説き伏せることは、思った以上に難しそうだ。だが、アメリはあきらめきれない。
予言の書は普段は厳重に保管されており、滅多なことでは人目に晒されることなどない。
例え改ざんをしたところで、この城の重鎮たちは、『金色の国の王太子がこの国を亡ぼす』という予言の書の内容だけをまことしやかに次の世代に言い伝えるだろう。
だがもしも、何かの機会に誰かが予言の書を開き、あの予言の言い伝えが間違えていることをその目で見る機会が訪れるなら――あの少年は暗闇から救われるかもしれない。
アメリは、その一縷の望みに何としても懸けてみたいのだ。
そんなことを思いながら虹色に輝くギャラリーを歩んでいると、「アメリ様!」と向かいから若い男に呼び止められた。
騎士の、ブランだ。
「どこに、おられたのですか? 国王陛下が、アメリ様の姿が見当たらないと苛立っておいででしたよ。俺なんか、とばっちりくらって、しょうもないことで怒られたんですから」
唇を尖らせながら、ブランはぶうぶうと不平を訴える。
「嫌な想いをさせてごめんなさい、ブラン。カイル様は、今どこにいらっしゃるの?」
「おそらく、回廊にいらっしゃるのではないでしょうか。先ほど、階段を登るお姿を見ましたので」