時を繋ぐ真実の物語<「私の獣」番外編>
愛しい人の頬に指を滑らし、「カイル様」と囁けば、天色の瞳がうっすらと姿を現した。


アメリを見るなり、どこまでも澄んだ夏の青空のような瞳を細めると、カイルはアメリの黒髪を指で梳きながら額にキスをした。


柔らかな感触一つで、アメリはつま先まで幸福に満たされる。


「カイル様、おはようございます」


「ああ」


「そろそろ起きなければ、ご政務に差しさわりがあるのでは」


「そうだな」


口では肯定の返事をしていても、カイルは一向に起きる気配がなかった。


ノースリーブのネグリジェから伸びたアメリの二の腕を撫でながら、瞼、頬、とアメリの顔に順にゆっくり口づけを落としていく。


二の腕を滑ったカイルの手は腰まで降りると、アメリの体のラインをなぞるように幾度も往復した。


淫らな手つきに、アメリは否応なしに昨夜の燃えるような情事を思い起こす。体の奥がじわじわと熱くなり、羞恥心からアメリは顔を伏せた。毎晩のように体を重ねても、恥じらいは消えてはくれない。






「カイル様、もう起きなければ……」


「もう少し、こうしていたい」


顎に指先が添えられ、やや強引に上を向かせられる。


恍惚とした視線を浴びると同時に、今にも触れ合いそうな距離に唇を寄せられた。


「でも……」


「こうして捕まえていないと、またお前が眠ってしまいそうで怖いんだ」






アメリは、一瞬にして息を呑む。


切実な色を浮かべる天色の瞳に心を奪われ、胸が軋んだ。


「……大丈夫です。私は、もうどこにも行きません」


必至に訴えれば、「そうか」とカイルは穏やかに言った。


そして、甘い果実を味わうように、ゆっくりと唇が奪われる。


優しいキスによって全身に甘い疼きが巡り、体から力が抜けていく。


カイルはそんなアメリをきつく抱きしめると、耳もとで「死ぬほど愛している」と囁いた。





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