時を繋ぐ真実の物語<「私の獣」番外編>
カイルは、しばらく何も言わなかった。


だがアメリの強い意志を感じ取ったのか、やがて「そうか」と穏やかな声を出す。


「どうしても、やりたいことがあるのだな」


「はい、何が何でも」


「お前のそういう強いところは、嫌いではない」


観念したように、カイルが間近で長いため息を吐く。


「だが約束しろ。絶対に、危険なことには足を突っ込むな」


「分かっております」


決意に漲るアメリの瞳を確認すると、カイルは許可を与えるようにアメリの額に口づけした。


自然と笑みを浮かべるアメリ見つめるカイルの顔が、ほんのりと赤に染まっていく。






「ここで、何をされていたのですか?」


「町を眺めていた。この時間の景色が好きなんだ」


アメリの手を取り、カイルは回廊の端ぎりぎりへと誘う。


茜色に染まる色とりどりの家々。遠く煌めく薄水色の湖に、若草色の草原。緩やかな夕風が、二人の髪を撫ぜていく。


「なんて綺麗なの……」


アメリの感嘆の声に、カイルが満足げに口の端を上げる。そして、背後からアメリを包み込むように抱きしめた。


「お前の好きな色が、たくさんあるだろう」


「はい。まるで、宝石箱のようです」


「この国は、美しい」


アメリの髪に鼻先を埋めながら、カイルが呟く。


「以前は、そうは思わなかった。だが今は、全てが美しいと思う。教会も、店も、家も、人々も、畑も、湖も――。どうしてか分かるか?」


「なぜですか?」


「お前に、出会ったからだ」


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