時を繋ぐ真実の物語<「私の獣」番外編>
耳もとで、優しく紡がれる声。
瞬間アメリは、以前にブランから聞いた話を、弾かれたように思い出した。
アメリが眠っていた二年の間に、カイルには幾度も縁談の話が持ち上がったという。
医者の見解では、アメリがこの先目覚めることはもうない、とされていたからだ。
繁栄の一途を辿っている国に、世継ぎがいないなど死活問題だ。
国の幹部たちは、あの手この手でカイルに妃を娶らせようとした。妃を迎えるつもりがなくとも、せめて側室を迎えるようにと懇願した。
だがカイルは、女を寄せ付けることを頑なに拒んだという。
昼は休みなく政務に追われ、夜は目覚めぬアメリを抱きしめて眠る。
忙しい政務の合間を縫ってはミハエル老人のガラス工房に赴き、自ら城を飾るためのガラス作りを手伝う。
全ては、アメリのためだけに。
カイルの深い愛を思い知るたびに、アメリの胸に焼けつくような熱情が湧く。
「カイル様……」
振り返ったアメリの唇に、カイルはすかさず唇を寄せる。
短くも深いキスのあと、カイルはその天色の瞳で、真正面からアメリを見つめるのだった。
「ともに、この美しい国を守っていこう」
「はい……」
そして二人は、茜色に染まる国を見下ろす回廊で、狂おしいほど甘いキスに酔いしれるのだった。
瞬間アメリは、以前にブランから聞いた話を、弾かれたように思い出した。
アメリが眠っていた二年の間に、カイルには幾度も縁談の話が持ち上がったという。
医者の見解では、アメリがこの先目覚めることはもうない、とされていたからだ。
繁栄の一途を辿っている国に、世継ぎがいないなど死活問題だ。
国の幹部たちは、あの手この手でカイルに妃を娶らせようとした。妃を迎えるつもりがなくとも、せめて側室を迎えるようにと懇願した。
だがカイルは、女を寄せ付けることを頑なに拒んだという。
昼は休みなく政務に追われ、夜は目覚めぬアメリを抱きしめて眠る。
忙しい政務の合間を縫ってはミハエル老人のガラス工房に赴き、自ら城を飾るためのガラス作りを手伝う。
全ては、アメリのためだけに。
カイルの深い愛を思い知るたびに、アメリの胸に焼けつくような熱情が湧く。
「カイル様……」
振り返ったアメリの唇に、カイルはすかさず唇を寄せる。
短くも深いキスのあと、カイルはその天色の瞳で、真正面からアメリを見つめるのだった。
「ともに、この美しい国を守っていこう」
「はい……」
そして二人は、茜色に染まる国を見下ろす回廊で、狂おしいほど甘いキスに酔いしれるのだった。