時を繋ぐ真実の物語<「私の獣」番外編>
「また来たのか。迷惑だ」


「承知しております」


「何度きても同じだ。あなたの要望には、応えられない」


ロイは、すぐさま扉を閉めようとした。だがアメリは、意外なほどの強い力でそれを防いだ。


「これをお渡ししたら、今日はすぐに帰ります。ですから、どうか受け取ってください」


真摯な眼差しとともに差し出された藍色の布の包みに、ロイは面食らった。









「なんだ? 金か?」


ふっと、あざ笑うような笑みが口から零れる。


金銭と引き換えに要求を呑む――社会では当然のようにまかり通っているシステムだ。だがこの澄んだ瞳を持つ令嬢は、そんな欲丸出しの取引きとは無縁のような気がしていた。


(この女も、しょせんその程度の人間だったということだ)


いったいこの女に、俺は何を期待していたのだ。呆れたような笑いが、胸のうちで止まらない。


だがずっしりと重たいその布を解くと、中から現れたのは意外なものだった。


すぐさま、ロイは眉をしかめる。


「これは、水晶玉……?」
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