時を繋ぐ真実の物語<「私の獣」番外編>
両掌に収まる大きさの見事な透明な球体は、太陽光にさらされるやいなや、淡い七色に色付いた。
どこまでも無色透明の水晶玉は、こんな光り方をしない。
「ガラスで造った、水晶玉を模したものでございます。それを、あなたに贈ります」
落ち着いた声で、アメリが言った。
「ガラス玉……?」
一瞬の間のあと、ロイはけたたましい笑い声を響かせた。
仮にも国に名高い占術師に、偽の水晶玉を贈るなど前代未聞だ。
純粋な水晶のみで造られる水晶玉は、ガラス玉などとは比べ物にならないほどに高価なものだからだ。
「俺に、この偽物を使えと……? 面白いお嬢さんだ」
「偽物ではございません」
ロイの執拗なまでの嘲笑にも、アメリは動じなかった。
「その玉には、未来を見る力も封じ込める力もございません。けれどもきっと、あなたの力になるでしょう」
「………」
アメリの言葉に、ロイは押し黙った。
(”未来を封じ込める力”だと? この女、どうしてそれを知っている?)
ロイが未来を見る能力に苦しんでいることを知っているのは、リザとその息子のダニエルだけだ。口の堅いリザは、ロイの最大の秘密を口外しはしないだろう。
ということは、犯人はおそらく数日前から帰省して邸の周りをうろついていたダニエルだ。
ロイは、忌々しげに舌打ちをした。
どこまでも無色透明の水晶玉は、こんな光り方をしない。
「ガラスで造った、水晶玉を模したものでございます。それを、あなたに贈ります」
落ち着いた声で、アメリが言った。
「ガラス玉……?」
一瞬の間のあと、ロイはけたたましい笑い声を響かせた。
仮にも国に名高い占術師に、偽の水晶玉を贈るなど前代未聞だ。
純粋な水晶のみで造られる水晶玉は、ガラス玉などとは比べ物にならないほどに高価なものだからだ。
「俺に、この偽物を使えと……? 面白いお嬢さんだ」
「偽物ではございません」
ロイの執拗なまでの嘲笑にも、アメリは動じなかった。
「その玉には、未来を見る力も封じ込める力もございません。けれどもきっと、あなたの力になるでしょう」
「………」
アメリの言葉に、ロイは押し黙った。
(”未来を封じ込める力”だと? この女、どうしてそれを知っている?)
ロイが未来を見る能力に苦しんでいることを知っているのは、リザとその息子のダニエルだけだ。口の堅いリザは、ロイの最大の秘密を口外しはしないだろう。
ということは、犯人はおそらく数日前から帰省して邸の周りをうろついていたダニエルだ。
ロイは、忌々しげに舌打ちをした。