時を繋ぐ真実の物語<「私の獣」番外編>
「カイル様」


壊れそうなほどにきつくアメリを抱きしめる金糸雀色の髪に、そっと口づけを落とす。部屋に溢れる色とりどりの光の中でひときわ美しく輝くその髪色は、アメリにとってこの世の何よりも愛しい。


「その、前からお伺いしたかったのですが……」


以前から、アメリには気になることがあった。だが、国の機密に関わることなので聞いていいのか確信が持てない。


「何だ? 言ってみろ」


言い淀むアメリを、艶やかな黒髪に無数に口づけながらカイルが促す。


「……予言の書は、どこに保管されているのですか?」






金色の髪を持つ王太子が生まれた時、ロイセン王国は滅ぶ――そんな内容の記された古文書をこの国の歴代の王は恐れ、そして金色の髪を持つカイルは災いの申し子としての過酷な運命を送らざるを得なかった。


カイルを苦しめ孤独に追いやったその予言の書が、アメリは憎い。予言の真偽のほどは定かではないが、アメリは全く信じていない。こんなことを口にしたら異端者として罵られるかもしれないが、占星術によって記された予言書など何の価値もない紙切れだと思っている。


天色の瞳が、間近でやや見開かれる。


「詳しくは知らない」


「……え?」


拍子抜けするほどにあっけらかんとしたカイルの返事に、アメリは虚を突かれた。


「……見たことは、ないのですか?」


「ない。人伝いに、内容を聞いただけだ。厳重管理のもと、この城のどこかに保管されていることだけは知っている。図書館主の老いぼれに聞いたら、知っているかもしれないな」






愛しげに目を細めながら、カイルは呆気に取られているアメリの頭を撫でた。


「何だ、今更そんなことが気になるのか? 俺はもう、気にしていないがな。お前が俺に言ったのではないか、お前だけを信じろと」


「ええ、もちろん私もカイル様を信じております。ただ一つ、気がかりなことがありまして」


「気がかりなこと?」


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