時を繋ぐ真実の物語<「私の獣」番外編>
リザの見ていた先には、アメリに手渡されたガラス玉があった。


布にくるんだまま棚に乱雑に置いていたはずだが、いつの間にか包みがほどけ、中身が露わになっている。


艶やかなガラス玉は、窓の隙間から入り込んだ僅かな光を受けて、淡い虹色の光沢を放っていた。


水晶玉であれば部屋の至るところに置いているが、水晶玉は太陽光を受けても輝かない。だから薄暗闇の中で唯一色を持つそのガラス玉は、はっとするほど煌びやかに見えた。


まるで無の世界で、そこだけ命が宿っているかのように。





気づけばロイは、吸い込まれるように、その虹色の光の玉を見つめていた。


色とりどりの光に触発されるように、脳裏を過ったのは、先ほど目にしたばかりのリザの微笑だった。


思えばリザは、どれほど長い間この邸にいるのだろう。


淡々と業務をこなすばかりの味気ない毎日だが、リザがいつもロイを気遣っているのには気づいていた。


それなりに老齢のはずだが、一度も暇を要求することもなく、当たり前のようにロイの傍にいてくれた。






(俺の、存在意義……)


ロイは、姿勢を正す。


思い出したのは、昨日聞いたアメリの声だった。


――『あなたの恋占いは良く当たると、女性たちはうれしそうに話していましたよ』


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