時を繋ぐ真実の物語<「私の獣」番外編>
自分の占いは、偽りだと思っていた。


敢えて未来を正しくは見ずに、相手の求めてることを読み取って口にしているだけなのだから。


父親に捨てられた孤独に加え、その罪悪感もまた、ときにロイを追い詰めた。


だが、ふと思う。それで、いいのではないかと。


占いに来た客は、いつもロイに「ありがとう」と笑顔を残した。


数々の客の笑顔が、虹色の採光に重なるようにして、記憶の中を駆け巡る。


胸に湧いたのは、感じたことのない温もりと安心感だった。







ロイは立ち上がると、ガラス玉に近づいた。


突然訪れた心境の変化が気味悪く、同時に心地よくもあった。


(あの女は、魔女か……)


間近でガラス玉を見つめ、不敵に笑う。








アメリのどこまでも澄んだエメラルドグリーンの瞳を思い出すと、胸の奥が小さく疼いた。


(もしも、あんな女がいつも傍にいたら、日々はどう変わるのだろう)


アメリを取り囲んでいるような柔らかな光に、自分も染まることが出来るのだろうか。


そんなことを思いながら、薄く微笑み、ロイは壊れ物を扱うようにガラス玉をそっと撫でた。
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