時を繋ぐ真実の物語<「私の獣」番外編>
予期せぬ再会

「考えが変わりました。予言の書の改ざんを、視野に入れましょう」


ケプラーから嬉しい申し出があったのは、アメリがガラス玉を彼に贈ってから数日後のことだった。


ケプラー邸の玄関先で、アメリは、目を丸くする。


鋼のように頑なだった彼の気持ちが変わったのは、やはりあのガラス玉の効果だろうか?


あの水晶玉を模したガラス玉には、ミハエル老人の工房で、様々な”温もり”の色を流し込んでいた。


”無色透明”の水晶玉ばかり見つめている孤独なケプラーの心に、少しでも”温もり”が芽生えるようにと。





「ただし、条件があります」


歓びのあまり笑顔になるアメリを前に、ケプラーが漆黒の瞳を意味深に細める。


「あなたには、この邸にしばらく通ってもらいたい。そして、仕事を手伝ってもらいたいのです」


「仕事……ですか?」


「ええ。この邸には使用人が一人いますが、もう長いこと暇を与えていないのです。余暇を与えるために、代わりの使用人をずっと探していました。あなたに、それを引き受けてもらいたいのです。もちろん、日中だけで構いませんよ」


アメリは、しばらく押し黙った。使用人の仕事をすることに、抵抗はない。だが毎日のように日中いないとなると、さすがにカイルは心配するだろう。


彼を、不安がらせたくはない。


「無理であれば、あなたの要求を受け入れることは出来ません」


いつまでも返事をしようとしないアメリに、ケプラーは冷たく言い放つ。


アメリは、決意を固めた。


「……分かりました。あなたの、条件を呑みます」






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